「欲しがるものは全て与え、焦らず待つ」HSCと診断された不登校の娘が学校に行くまでを支えた親の信念
子どもに欲しがるものを与える本当の意味
――子どもが欲しがった物は何でも買ってあげて―― ゲームや、消しゴム、お菓子、かわいいキャラクターグッズなど、娘たちが欲しがったものは無理のない範囲で買い与えている。夫からは「またアイス買ったの? 好きなものを与えすぎだ」とあきれられるものの「負けません。私は私の信念を貫き通しているだけだから」とマキさんはほほ笑む。 一般的にも「買い与えてばかりだとわがままな子になる」といった声は根強い。 「子どもがこれ欲しい! って言うのって、単なる欲望もあるかもしれないけれど、真意のひとつとして自分を認めて欲しいっていう気持ちがある。そこをくみ取ってあげるのが一番大事。そこを満たしてあげれば、エネルギーも溜まっていくと思いました。それに、買ってあげると親が無理をしなくて済むというのもあります。物をねだられた時にこちらが抵抗すると、すごく労力を使ってしまう。それでなくても発達に特性があれば、拘りが強くて普段から大変なので」(マキさん)。 子どもは成長とともに視野が広がり理解度が増す。経済的なこと、親の懐具合だって理解する。マキさんは「何でもかんでも欲しがるようなことにはならない」と考えている。もともと食物にも敏感で小麦や香料アレルギーなどがあるため、おやつなどもなるべく添加物の少ない安全な素材のもを選んでいるという。
親は一番の味方でいて欲しい
池添さんは「リコちゃんのおうちは、お母さんが早期に対応してくれたことが功を奏したと思う」と切り出し、こう続けた。 ――不登校の「早期対応」は、学校に行けるようにするんじゃなくて、早く休ませてあげること。休んでいる間に学校と話をして、学校の受け入れ体制を整えてあげて欲しい―― しかしながら、子どもが不登校になった人の中には、周囲から「学校より家のほうが居心地がいいからじゃないですか?」と言われたという声は少なくない。そこには「親が甘やかすからだ」という否定的なニュアンスがにじむ。厳しく接しないと子どもは伸びない。ストレスをかけて、そこから這い上がらせるのが教育だ――そんな古い概念がいまだ根強い。 池添さんは「学校の先生も、社会に出たらもっと厳しいよって児童、生徒に伝えますね。先生たち自身もそう言われて育ったのでしょう。辛かったはずです」と話す。大人や社会から厳しくされるのは当然だと刷り込まれていると、パワハラや劣悪な環境を受け入れてしまいがちだ。 「学校も会社も、からだやこころを壊してまで行くところではありません。それで自死している若者もたくさんいる。だからこそ、親は一番の味方でいて欲しい。そこで親が『理不尽なことは社会でもあるよ』って言ってしまうと学校と同じように子どもを追い詰めてしまいます。子どもが安心できるために何ができるのかっていうのを、親御さんはからだを張って考えていいんじゃないかな」(池添さん)