「いいやつ」から「大親友」に。 カゴメ が目指す、記憶に残る「体験設計」の生み出し方
社会における健康意識の高まりのなか、通販の売り上げが100億円を超え、さらなる成長を目指しているカゴメ。店頭では体験できない「カスタマージャーニー」を提供し、着実にファンを増やしている。 「いいやつ」から「大親友」に。 カゴメ が目指す、記憶に残る「体験設計」の生み出し方 DIGIDAY[日本版]のインタビューシリーズ「look inside!─マーケターの思考をのぞく─」では、企業の成長につながった施策や事業を切り口に、そこに秘めたマーケターの想いや思考を追っていく。 今回は、デジタルマーケティング領域から通販事業に軸足を移したカゴメの細川和紀氏に、ファン化戦略、事業拡大の秘訣を聞いた。 ◆ ◆ ◆ DIGIDAY編集部(以下、DD):データドリブンマーケティング推進に尽力されていたとのことですが、2022年に通販事業に異動されて、新たなコミュニケーションに挑戦していると聞きました。 細川和紀(以下、細川):2022年の10月に自社通販である「健康直送便」とECの営業部門が統合された組織が新設されました。全社的にも顧客との関係構築や、ファン育成が課題になっていることもあり、今後注力していく領域になります。 個人的には、お客さまとの接点が多く、かつ情報が集まる通販でひとつの成功モデルを作りたいという思いがあって異動を希望しました。いままでは通販と店販は分けて考えていたのですが、お客さまにとってはどちらでも同じ「体験設計」ができたらよいのではないかと考えています。
カスタマージャーニー上、もっとも気持ちのいい場所に
DD:通販事業領域ではどんなことをしているのでしょうか。 細川:ファン化の推進、商品企画、広告出稿以外での新規顧客の獲得、主にCRMの領域になります。 そもそも通販がスタートしたのは1998年で、「夏に畑で採れたトマトをかじったら美味しいよね。これをジュースにしたら絶対お客さまに喜ばれるんじゃないか」といったところからはじまりました。実際にそれを「夏しぼり」というトマトジュースにして販売したところ、想像以上の反響がありました。 このときに「大地の恵みに溢れた本物の商品はお客さまに喜ばれる」という手ごたえがありました。いまでは通販の売り上げが100億円を超えましたが、次のステージに行くためには単品リピート型の通販モデルからどう脱却していくかが課題です。 細川 和紀/カゴメ株式会社 営業本部 健康直送事業部 企画グループ 担当課長。2011年にカゴメ株式会社へ入社。トマトケチャップの製造、品質管理部門を4年経験したのち、 広告部門でSNSアカウントを活用したCRM推進、マーケティングシステム基盤構築など社内でのデータドリブンマーケティング推進・定着に従事。2022年10月より自社通販部門で既存会員向けコミュニケーションやSNSを活用した新規顧客獲得企画を担当。得意料理はオムライス。社内資格である「オムライス検定」の受験をきっかけに練習し、いまでは家族のお気に入りメニューに。最近はオムライスを食べ歩きながらさまざまな種類のオムライス(たんぽぽオムライス、ドレス・ド・オムライスなど)作りに挑戦中。 DD:どのような脱却を想定されているのでしょうか。 細川:いまは、売り上げのメインが「つぶより野菜」という野菜ジュースの定期購入です。ですが、通販サイトの「健康直送便」自体の認知度は低く、「つぶより野菜」を買うために通販サイトに入り、それ以外の商品は見逃してしまっています。クロスセルをどうつくっていくか取り組んでいるところです。 「健康直送便」は国産原料で本物であることにこだわっています。そういった共通メッセージを発信することで、国産野菜に興味関心のあるお客さまにはサイト内の商品の併買の可能性もあると考えています。 DD:通販商品企画の社内におけるプレゼンスはいかがでしょうか。 細川:売り上げは、まだ店販商品におよばないのですが、社内では重要な事業として扱われている認識です。自社通販は、お客さまを想ってカゴメがこだわって作っている「品質のよい商品を直接お届けできること」に価値があると考えています。 カゴメのものづくりのこだわりや、商品開発の技術力を「体験」いただくのに通販商品は最適であると社内でも考えられています。 また、野菜や自然の力を食以外の領域へ拡張し、カゴメにとっての提供価値の幅を拡張する急先鋒になるという役割も担っていると考えています。これはいわゆるテストマーケティングの役割です。 DD:店頭では購入できない特別なものが買える、ということですよね。コミュニケーションの設計はどのようにされていますか。 細川:これは通販の領域に限らないと思いますが、まずはカテゴリーエントリーポイント、つまり想起集合のなかにカゴメの通販事業やサービス、商品が入ってくように意識しています。いまは情報量も多いので、そのなかでいかに思い出されるか、思い出す場所と商品の結びつきが重要で、お客さまの日常生活のなかで、カゴメといちばん結びつきの強いポイントは何か、常に考えています。 その上で、私の担当領域がオウンドメディアのため、自社の持っているオウンドメディアが、お客さまのカスタマージャーニー上のどこに配置をすると購入体験上もっとも気持ちがいいのかというところを設計しています。