「神の比率」を持つ幻のシャンパーニュ......。日本先行発売「アンリ・ジロー DP12」、1本140万円を超える超希少な味わいとは?
「アルゴンヌの森」から生まれる樽は、アンリ・ジローを熟成させる「宝石箱」。
「アイ村のテロワールから生まれたブドウは、まさに天然のダイヤモンドのような美しい宝石です。しかし、さらに美しく表現するためには、それを磨き上げ、宝石箱に入れなければならない。アンリ・ジローのシャンパーニュにとって、アルゴンヌの森で育まれたオークでできた樽はまさに宝石箱なのです」 アルゴンヌの森は、アイ村から東に70キロ進んだ場所にある。1億1000万年前から続く、二酸化ケイ素の多い痩せた土地だ。16世紀、フランスでは軍艦を建造する時にアルゴンヌの森からとれたオークを使用していた伝統があるほど、密度が高く水に強い性質を持った樹が育つ土地だった。当時から、植樹をする際にはあえて樹間の密度を高くして日当たりを悪くし、光を求めて高く育つようにした。 「アンリ・ジローのチームはアルゴンヌの森の中に10カ所の『樽のため』のテロワールを発見してきました。たとえば『シャトリス』と呼ばれる地域で育つオークの樽に入れて熟成したワインは力強く、尖った味わいに。『コントルリー』の樽ではアプリコットやミラベル(西洋プラム)のような黄色いフルーツの要素が、『バルミー』の樽からはベルベットのような滑らかさがワインに加わります」 「さらに、伐採したオークの木は根本から頂点にかけ、8段階に区分しています。下の方が力強い味わいを生み、上部ほど繊細な味わいを持つワインが生まれやすい。アンリ・ジローでは、どの高さの樽を使ったかも記録しています。アイ村150以上の区画で造られるブドウ、10カ所の樽のテロワール、樹木の位置......。これら全てを踏まえ、毎年、収穫の1週間前に契約している樽の業者へと足を運びます。アイ村で試したブドウの味を思い出しながら、その年に使う樽を選別するのです」 伐採された樫の木は、タンニンを抜き、また反りが出ないように3~5年をかけて野晒しにされる。 「5年かけて野晒しにしても、オークはタンニンが強い樹です。ですが、それを樽に仕上げてトースト(注:樽の中を焼き付けること)することで、あたかもシェフが素材に火を入れるように、樽のタンニンさえ調理してアンリ・ジローが目指す樽の個性を造り上げていきます。大量生産をしたければステンレスタンクや大容量の樽を使うのが効率的でしょうが、我々はあえて小さな容量の樽にこだわる方向性に回帰しています。ここまで樽にこだわっているメゾンは、他に例がないと自負しています」 樽に使うオークの樹は平均樹齢200年。もちろん、サステイナブルな観点も忘れてはいない。 「伐採の作業はフランス森林局とともに行い、どこの区画を使用したのか必ず記録します。そして森林局と協業で植樹も行っています。木箱入りシャンパーニュが1本購入されるごとに、樹齢2年の若木を1本植樹することにしています。200年後、7、8世代後にも、アンリ・ジローのシャンパーニュがアルゴンヌの森とともにあるためです」