「『逆らえば地獄に落ちるぞ』住職にマインドコントロールされ、性暴力を14年間受けた」 口をつぐむ大僧正、真実は…
天台宗の寺の住職から性暴力を受け続け、14年間にわたりマインドコントロール(洗脳)されたとして、50代の尼僧叡敦(えいちょう)さんが1月、記者会見を開いて被害を告発した。この住職の師匠は、天台宗で最高位の大僧正。叡敦さんは、大僧正が加害行為を手助けしたとも訴えている。 祖父との関係は、「就寝中のこと」を除けば良好だった 家族からの性虐待に10年耐えた女性の今 23年
住職から「逆らうと地獄に落ちる」などと脅され、日常的に性行為を強いられたとしている。「鳥かごの中で飼われていた14年間だった。アイデンティティーを奪われ、存在を消された」。天台宗に対し2人の僧籍剥奪を求めている。「閉ざされた世界」で何が起きていたのか。奪われた尊厳を回復する闘いが始まった。(共同通信=吉田梨乃) ※天台宗や住職らは事実関係について取材に応じないため、以下は叡敦さんの訴えを元に記述しています。 ▽「仏さま」と育つ 叡敦さんは、母方の祖父が香川県の高僧で、天台宗の信仰に親しみながら育った。「仏さま」は自身を優しく包み込んでくれる大きな存在だったという。 大僧正は、母のいとこ。叡敦さんが小学生の時、滋賀県と京都府にまたがる比叡山で約7年間巡礼を続ける「千日回峰行」を成し遂げた。与えられた称号は「北嶺大行満大阿闍梨」。親族から「仏さまに一番近い存在だ」と聞かされ、叡敦さんも「生き仏」として崇敬していた。
26歳で結婚。夫と生活を始めたが、両親の介護が必要になり、仕事を辞めて約10年間、介護に専念した。 2009年7月、父に続いて母を亡くし、翌月、大津市の寺で供養を済ませた。この寺は大僧正が住職を務めている。生前の両親からここで供養するよう依頼されていた。 大僧正はその際、弟子に当たる住職を訪ねるよう指示。四国地方にある住職の寺を訪れた。叡敦さんは、この段階ではまだ僧になっていない一般の信者だ。叡敦さんによると、住職は初対面から間もなく、執拗な電話やつきまといなどのストーカー行為を繰り返した。困って大僧正に相談したが、大僧正からはこう言われた。 「住職の言うことは私の言うことだと思うように」 崇敬していた大僧正の言葉。夫などに相談することもできなかった。 ▽信仰を利用したマインドコントロール 初めて性行為を強いられたのは2009年10月だという。体調不良を訴える住職から寺に呼び出され、寺で突然、押し倒された。その後、頻繁にホテルに連れ込まれ、繰り返し性暴力を受けた。強姦されている間、「オンアロリキャソワカ」などの真言を唱えるよう指示された。