アンジュルム・平山遊季さんが「ベーチェット病」を公表 原因・4つの特徴的な症状を医師が解説
アイドルグループ「アンジュルム」の平山遊季さん(18)が指定難病「ベーチェット病」と診断されたことを、所属事務所「ハロー!プロジェクト」の公式サイトで公表しました。 【イラスト解説】「自己免疫疾患」を発症する原因や症状、治療法 ベーチェット病は働き盛りの男女に発病する病気で、研究は進んでいるものの原因も治療法もまだ確立されていません。 この記事では、ベーチェット病の原因や特徴的な症状、検査方法・病気の予後・生活するうえでの注意点について、医師の郷先生に解説していただきました。ベーチェット病についての理解と知識を深めていきましょう。
ベーチェット病の原因や症状
編集部: ベーチェット病とはどのような病気ですか? 郷先生: ベーチェット病とは、身体の免疫機能が何かしらの原因で過剰に反応してしまい、身体の広範囲に渡って炎症が起きることで、様々な症状を引き起こす難病です。 患者さんによって現れる症状は様々で、症状が「出たり」「治まったり」を長期間かけて繰り返すのが特徴となります。 主な症状4つと、副症状から「完全型」「不全型」「特殊型」の3種類に分類されますが、原因も治療法も確立されていないため、指定難病56番に指定されています。 編集部: 原因は何ですか? 郷先生: 現段階では、はっきりとした原因は不明です。 しかし、人間の免疫に関わる重要な分子であるヒト白血球抗原(HLA)の「HLA-B51」や「HLA-A26」というタイプが通常よりも多いことが注目されており、遺伝的な要因に環境的な要因(病原体に感染するなど)が加わることで白血球が過剰に反応してしまい、ベーチェット病を発症するのではないか、と考えられています。 編集部: 特徴的な症状を教えてください。 郷先生: ベーチェット病の特徴的な症状として、「口腔粘膜のアフタ性潰瘍」「外陰部潰瘍」「皮膚症状」「眼症状」の4つがあり、厚生労働省の診断基準にもなっています。 「口腔潰瘍(口腔粘膜のアフタ性潰瘍)」 口の中にできる、円形の浅い潰瘍です。頬の内側の粘膜・口蓋粘膜・口唇・舌・歯茎にできやすく、ベーチェット病の患者さんの約98%に現れます。 ベーチェット病の症状の中で最初に出現することが多く、高確率で繰り返し起こりやすい症状です。潰瘍ができることで口腔内に痛みが生じ、飲食が苦痛となる患者さんもいます。 「外陰部潰瘍」 外陰部にできる、深めの潰瘍です。口腔潰瘍と同じような形で現れますが、口腔潰瘍より深めの潰瘍になるため、患者さんによっては跡が残る場合もあります。男性では亀頭・陰嚢・陰茎にできやすく、女性では膣粘膜や大陰唇・小陰唇にできやすく、痛みを伴う潰瘍です。 「皮膚症状」 顔や頸部・胸部に、にきびの様な皮疹(座瘡様皮疹)や、下腿や前腕に1cmから5cm程の皮疹(結節性紅斑様皮疹)が現れます。 結節性紅斑様皮疹は周囲の皮膚が赤くなり、触れると固く、痛みを伴う皮疹です。皮膚の表面に近い血管に血栓性静脈炎がみられることもあり、こちらは特に下肢に多くみられます。 「眼症状(ぶどう膜炎)」 ベーチェット病には様々な症状がありますが、最も注意をしなければならないのが眼症状です。 前眼部と後眼部で現れる症状が異なり、前眼部では充血や眼痛、光がまぶしくて目を開けていられない(羞明)、霧がかかったように見える(霧視)の症状があり、後眼部では網膜や脈絡膜に炎症が起きて目がかすむ、視野が狭くなる(網膜絡膜炎)や、視力低下がみられます。 一時的に両眼に起こる炎症で、症状が治まれば改善されます。しかし、症状が繰り返し起こるのがベーチェット病の特徴なので、炎症を繰り返すことでダメージが蓄積し、視力低下から失明に至る場合もあるので適切な治療が必要です。 編集部: ベーチェット病の患者数はどのくらいですか? 郷先生: ベーチェット病の患者数は、日本では約2万人いるといわれており、北海道や東北などの寒い地域に多く、南の暖かい地域に行くほど患者数は減少しています。 日本の他にも中国・韓国・中近東・地中海の沿岸にある地域に患者数が多くみられ、北緯30度から北緯45度付近の地域に集中していることから「シルクロード病」と呼ばれる場合もあります。 発症する年齢は20~40代に多く、30代がピークです。男女の差はありませんが、男性のほうが副症状である神経病変や血管病変を発病しやすく、重症化しやすい傾向にあるといわれています。 編集部: ベーチェット病は遺伝するのですか? 郷先生: 遺伝的な要因は原因の1つにはなっていますが、まだ解明されていないことも多いため、 家族間で遺伝するかどうかは分かっていません。現在ではヒト白血球抗原(HLA)以外の原因が次々と解明されてきていますので、研究は着実に進んできています。