パニック障害のせいで、歯の治療だけで100万円超え!?全身麻酔で抜歯に挑む【漫画の作者に聞く】
幸せに暮らしていたある日、突然激しい吐き気が!理由もわからず繰り返す発作〝オエオエ地獄〟に苦しむこと5年…その原因はパニック障害だった。富山在住のデザイナー・種(たね)さんが、自身の体験を描いた漫画「パニック徒然日誌」がSNSで反響を呼んでいる。テーマは「パニック障害と歯医者(2)」。漫画に込めた思いなどを著者に聞いてみた。 【漫画の本編を読む】歯の治療で100万円超え!? ■「パニック障害と歯医者(2)」 元々大の苦手だった歯医者。パニック障害によって発作の不安が増し、とても治療用の椅子にすら座れない。そんな中、掃除中に歯を折ってしまったことでやむなく病院行きを決意。睡眠状態で治療ができる静脈注射での治療(静脈内鎮静法)に望みを託したが…。 なんと、静脈注射を拒否された。要治療箇所が多すぎて10回以上通わなければならず、この病院では静脈注射が保険適用外だったため、100万円を超えてしまうという。絶望した種さんは、保険で手術できるという大病院を紹介してもらった。 すると、保険が適用される治療になるが、静脈注射ではなく全身麻酔で一気に手術するという。もちろん全身麻酔の危険性は極めて低いが、リスクが完全にゼロになるわけではない。パニック障害のせいで、なぜ歯の治療ががこんなに大ごとになるのか…。種さんはため息をつく。 ご主人同行の術前検査を経て、いよいよ手術当日。開き直った種さんには、秘かな企みがあった。全身麻酔に耐えてみせる(覚醒を保つ)ということだ。 全身麻酔に抗うという、ささやかなレジスタンスは当然無駄な抵抗でしかなかった。一瞬で意識が落ちる。そして気が付いたときには…。 ■歯石取りが地獄の痛み!隣のおじさんも海老反りに パニック障害のために、大がかりな治療となってしまった。ほかにもこの治療ではさまざまなエピソードがあったという。「小心者で元々注射(採血)が苦手なのですが、採血6本分をなんとか耐え抜いたあとに、『血の凝固検査で、今から少し耳たぶを切らせてもらいますね』と言われ、めちゃくちゃ焦りました。内心『耳たぶを切る!?え、どういうこと!?』とパニックでしたが、今さらうろたえるのも格好悪いので、『どうぞ』と真顔で乗り切ったものの、終わったあとは足がガクガクで、アヒルみたいな歩き方で次の検査室まで行きました」 手術前に歯石取り(歯のクリーニング)を行ったが、こちらも大変だった。「歯石取りを体験された方はわかると思うのですが、これはもう痛いなんてもんじゃない。痛みで海老反りになるのを押さえつけられながら、なんとか終わりました。このときは薬を飲んでいたとはいえ、パニックの発作が全く出る気配すらなかったのが不思議でした。それくらい、余裕がなかったともいえます…まさに地獄の痛み。横で歯石取りをされているおじさんも全く同じ状態になっていて、ちょっと笑いました」 ■医療関係者を始め、たくさんの人に感謝 大変な体験をした種さんだが、「今回、関わってくれた方全員に本当に感謝しています。実際に診てくださった先生方はもちろん、漫画には出てきていませんが、いろいろ教えてくれたり、励ましてくれた友人たちもたくさんいます。なんだか『大病からの復活感』がありますが、実際はただの『歯』の治療なんですよね。パニック障害になってから、小さなことでも本当にたくさんの人の支えが身にしみています。なにより、ずっとこのただの『歯』の治療に付き添ってくれた夫にも本当に感謝です」 ※本作で紹介している症状は、個人の体験談でありすべての人に当てはまるものではありません。似た症状で悩んでいる場合は医師・看護師等の専門家に相談してください。また、センシティブな内容を含むため、閲覧にはご注意ください。 取材・文=折笠隆