「もう笑うことができないかも…」出産直後に感じた罪悪感 小さく生まれた赤ちゃん家族の不安
子どもが早産、9割以上が「不安や悩み」
NICUに入院した子どもと家族、全国の家族会をつなぐ「日本NICU家族会機構(JOIN)」が、ベビー用品大手のピジョン(東京都中央区)とともに、2023年10月、早産を経験した家族を対象に出産・育児に関する調査しました。 すると、9割超が「子どもが早産で生まれて不安や悩みを抱えている」と答えました(有効回答数249人)。 特に目立ったのは母親の「自責の念」や、子どもの発育や発達といった「今後への不安」です。 「後遺症や障害がどのくらい残るんだろうと申し訳ない気持ちでいっぱいでした」(出生時28週、体重1020g) 「こんなに小さく産んでしまったのは自分のせいだとかなり気落ちしました」(31週、732g) 早産になると自分を責めてしまう母親は多くいますが、早産の理由ははっきり分かっておらず、予防法も確立していません。 調査では、支援の窓口となる行政や幼稚園、保育園においても知識や理解が不十分だと感じるというコメントも寄せられました。 「早産で生まれても保育園などの集団生活では実月齢のほうが重視されるため、保育士らとの認識の差があり、同じクラスの子と比べられてしまった」(23週、583g) 「自治体の保健師さんが、なぜか低体重児に関しての知識があまりなかったようです。出生届を出しに行った際に、『37週までおなかに入れておいてねってお話しましたよね』と言われてつらかった」(30週、1302g) 行政や地域の支援について「不十分だと感じたことはありますか?」という質問に対しても、約6割が「よくある」「時々ある」と答えました。
「当事者家族」ひとくくりではなく
小さく早く生まれた子どもを育てていても、家族が抱いている気持ちはそれぞれ同じではありません。 当事者家族のゴーウィンさんは、JOINが集めた家族の声から、「おめでとう」と祝福されることへの感じ方を紹介しました。 「なかには、小さく未熟に産んでしまって自分を責めていたので、とても『おめでとう』と言われる状況ではないと受け止めている方もいました」 一方でゴーウィンさんは、入院中に緊急帝王切開になったため、誰も「おめでとう」と言ってくれないだろうと寂しさを感じていたといいます。 「でも、看護師さんが来て『おめでとうございます』と言ってくれたときには、『私もおめでとうと言ってもらっていいんだ』と、すごくうれしかったことを覚えています」と振り返ります。 ゴーウィンさんは、「このように、一つ一つの声かけに正解はありません。私たち家族も様々な思いを抱えています。『当事者家族』というひとくくりの対応ではなく、その家族にとって何ができるかを考えていけるとうれしいです」と話しました。 今回のイベントには、慶應義塾大学医学部小児科の医師でJOIN代表理事の有光威志(たけし)さんと東京都助産師会の会長・宗祥子さんも登壇しました。 有光さんは、小さく早く生まれた赤ちゃんの現状について説明し、「医療者、家族会である私たちの想いはひとつ。子どもを救いたい、家族を支えたい」と話しました。 宗さんは、赤ちゃんがNICUで治療を受けた家族への産後ケアや取り組みについて紹介しました。 「小さく生まれた赤ちゃんやご家族を、私たち医療者や地域の人、行政で支える社会になってほしい」と呼びかけていました。