「壁ドン」ほんとにきゅんとする?ーー多様な性とジェンダーの表現を模索する、ドラマのつくり手たち #性のギモン
「女子高生が本当はどういうことを感じているかを想像せずに、男性視点でつくってしまうと、消費されるコンテンツになりやすい。セクシュアルマイノリティーについてもそうです。私は、自分は違うから関係ないではなくて、自分にもそういう部分があるのではないかとか、友だちがそうだったときに助けになれるか、といった視点で考えるようにしています。日ごろから、当事者意識をもって書くという姿勢が大事だと思っていて、その誠実さをもってあらゆる問題を描きたいと思っています」 これまでにもジェンダーをテーマにした舞台を手がけたり、作品に性的マイノリティーを登場させたりしてきた。 「もともと性役割にすっぽり当てはまっているような男性や女性を書くのは好きではありませんでしたが、なぜ嫌なのかを言語化できるようになったのは、セクシュアリティーやジェンダーについて学んだからだと思います。新しい言葉を手に入れたような気持ちでした」
「幸せ」の種類が足りていない 山田さん
『17.3 about a sex』の脚本を書くときは、あらゆるステレオタイプを疑った。 「例えば、私は『壁ドン』に懐疑的なんです。もし急にされたら怖いなと思います。『俺がお前を幸せにする』とかも、きゅんとするセリフだとされていますけど、どうして女性が幸せにされる側じゃないといけないのかなって。その逆があってもいいですよね。さらっと書いてしまいそうなセリフにこそ、ジェンダーバイアスがかかっているのではないか。もっといろんな幸せのあり方があってもいいのに、『あなたはあなたの人生を、私は私の人生を生きて、一緒に幸せになろう』みたいなセリフはあまり聞きません。(ドラマで)描かれている幸せの種類が足りていないと感じます」 『17.3 about a sex』では、3人の主人公のうち、一人をアセクシュアルの設定にした。親友からも理解されず傷つくが、のちに謝罪を受け入れる。 「(アセクシュアルをテーマにした)第2話が配信されたあと、当事者である友人が『初めて私がドラマに出てきた』と言ってくれたんです。アセクシュアルのキャラクターが友だちと幸せに過ごしているのを見て、『高校生のときにこういうロールモデルがほしかった』って。マイノリティーが受ける差別を無視することはできませんが、フィクションで繰り返し悲劇的に描かれることの問題もあります。ドラマに出てくる当事者を不幸に描かないというのは、気を付けていました」