クルド人と過激ヘイト 「仮放免者にも就労を」 川口市で見えた外国人政策の課題【報道特集】
外国人にとって日本語は非常に難しい。家族でここに足しげく通う男性は、産業廃棄物の処理のテキストを音読していたが「何人」(なんびと)という言葉の読み方で詰まってしまった。 クルド人男性 「どこの人でも。ナニビトも」 ボランティア男性 「ナニビトよりも、なんびとの方がいいな」 隣で聞きながら「何人」を正しく読める人は、果たして何人いるだろうかと思った。この男性は就労が禁じられている「仮放免」だが、こんな思いから勉強を続けているという。 クルド人男性 「産廃処理の資格を取得すれば、もしかしたら、在留資格をくれるんじゃないかなって思ってるわけです」 ■「友好なんて生まれない 死ね!」ヘイトは支援団体にも この日は新学年スタートの直前。部屋にはクルド人家庭に提供するランドセルや文具などが山積みになっていた。全て寄付やリサイクル品。少年がカバンを背負うと褒める声があがった。 支援者 「はい、どうぞ!」 「わーぴったり!!」 満面の笑顔を浮かべる少年。その隣では日本人男性がクルド人の子供の名前を聞き取っていた。親にかわって、筆箱、鉛筆、雑巾などに名前を一つ一つ、書き込んでいく。代表の温井さんの妻が、はっぱをかけるように若いクルド人の母親に声をかけた。 温井まどかさん 「勉強、勉強!子供の名前を書けないと、今度困るね、ママ」 一式揃ったところで親は丁寧に頭を下げて帰っていく。よほど嬉しいのだろう、子供たちは誇らしげな顔でランドセルを背負って、跳ねるようにして親を追いかける。 だが、こうした地道な支援にも、ヘイトの矛先が向けられている。代表の温井さんが見せてくれた団体宛てのメールには、クルド人への罵詈雑言を連ねた内容が並んでいた。頻繁だという攻撃の電話の音声も聞かせてもらった。 電話の男性 「友好なんて生まれるわけないじゃないですか、あんな奴ら。かばうお前らクソ日本人がやっぱりクソだと思うんですよ…死ねこの野郎」 正体を明かさない男性の一方的な叫び声に、デモを取材しているときに感じた、暗く、悲しい気持ちが胸に湧く。男性は、川口周辺に住んでいるわけでもなければ、直接クルド人から迷惑を受けたわけではないと話す。こうした攻撃は去年7月の乱闘事件を境に激増したという。