クルド人と過激ヘイト 「仮放免者にも就労を」 川口市で見えた外国人政策の課題【報道特集】
市長はさらに国による支援も求めている。一連の取材を通じて、外国人との共生を掲げるものの具体策に欠ける政府のあり方が、川口のクルド人問題の背景にあると改めて感じた。 ■「夢は国連で難民支援」 仮放免を抜けだしたクルド人青年 「仮放免」が解消されれば、クルド人の問題も減るはずと話す若者もいる。9歳で来日したギュル・メルバンさん(仮名)は14年間、仮放免で川口に住み続けてきた。 ギュル・メルバンさん 「周りの人がみんな知らない言語を話していて、最初はすごい怖かったですね」 不登校の時期を乗り越えて、次第に学校にも馴染み、大好きなサッカーを通じて仲間もできた。それでも、日本には自分の居場所がないように感じてきたという。 ギュル・メルバンさん 「いつ収容されるかわからないし、いつ強制送還されるか分からない、というのがあって将来を想像することがあんまりできないんです」 クルド人の窮状を広く知ってほしいと、猛勉強を重ねて大学に進み、難民の問題を研究してきた。そして去年の秋、大きな転機が訪れたという。見せてくれたのは「在留カード」だった。 ギュル・メルバンさん 「急に在留資格をもらうことになって、心臓が飛び出そうになりました。1週間ぐらいずっと毎朝起きて見ていました。『本当にもらえたんだ、やっと』って」 法務省は6月10日に施行された入管法の改正にともなう特例として、日本で生まれ、学校に通う子がいる仮放免の家族などに在留資格を与えている。このことで仮放免から解放されたギュルさんはある夢にむかって、一層、勉強に打ち込んでいると話す。 ギュル・メルバンさん 「ついこの間までの自分のように夢をもつことすらできない難民キャンプとかで生活している人々、子供たちを支えたいなっていう気持ちがあって。将来の夢はUNHCR=国連難民高等弁務官事務所で働くことです」 まっすぐな眼差しの青年はしかし、顔と本名を表に出すのは控えたいと言った。「自分はまだしも、家族がヘイトの対象になるのを心配している」という言葉に、在留資格を得てもなお日本で生きづらさを抱えるクルド人の現実を改めて見た気がした。