能登半島地震教訓に地震の長期評価を前倒し公表へ 政府の地震本部、防災対策への活用期待
政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が全国で進めている活断層型地震の長期評価の作業を急ぎ、予定より早めて公表することを決めた。大震災になった能登半島地震を受けた措置で、これまでより簡易的な方法による評価結果でも、2024年度から順次、地域のリスクとして公表する。同本部の関係者は地元の地震被害想定策定や防災計画・対策に役立ててもらいたいとしている。 地震を引き起こしたとされる能登半島沖の活断層はその存在が指摘されていた。しかし、詳しい地震の規模や発生確率などの評価が遅れていたため、この評価を待っていた石川県の地震被害想定も更新されていなかった。地震本部はこうした経緯を重視し、今回の甚大被害を教訓に防災対策強化の観点から評価方法を改める判断をしたという。
間に合わなかった地震被害想定の更新
1月1日に石川県能登半島地方の深さ15キロを震源とするマグニチュード(M)7.6、最大震度7を観測する大地震が発生。石川県によると、29日現在で死者は241人、けがをした人は約1200人、住宅被害7万5000棟以上もの被害を出した。震度4以上の余震は65回を数え、依然1万1500人近くが避難所暮らしをしている。断水が続いている被災住宅も1万8000戸を超えている。連日懸命の復旧作業が続いているものの、地震発生から2カ月を迎える被災地の状況は依然厳しい。 石川県は能登半島地震が想定されるとして、地域防災計画を策定していた。津波対策を重視し、最大規模の津波を起こす地震の震源として能登半島北方沖の海底活断層を想定。2011年の東日本大震災の後、津波被害想定を見直し、この海底活断層による地震を警戒していた。
しかし、「セット」であるはずの地震想定は、1997年にまとめた能登半島北方沖の別の活断層を想定したままで改定していなかった。この想定では甚大被害は予測されず、死者7人、避難者2781人、建物被害はわずか120棟とされていた。これらの数字は今回の大地震の被害規模と比べ、各段に少ない。地震被害想定の改定が遅れていたために結果として広範な分野にまたがる地域防災計画に反映されなかったことになる。 石川県の馳浩知事は地震後の記者会見で「地震被害想定見直しには国の(長期評価の)調査が必要で、調査を待っていた。今後の早期の調査を国に求める」などと述べている。