能登半島地震教訓に地震の長期評価を前倒し公表へ 政府の地震本部、防災対策への活用期待
海底活断層評価も公表迅速化
政府の地震本部は地震に関する調査・研究を統括する組織で、防災・減災対策に役立てるために1995年の阪神大震災後に設置された。日本周辺の海溝型、活断層型それぞれについて一定期間内の地震発生確率や規模を予測する「長期評価」を公表している。地震や津波、防災工学などの専門家らが委員を務める。
同本部内では地震調査委員会が地震の発生確率を示す「長期評価」をし、評価に基づく「全国地震動予測地図」を公表する。ほかに広報や調査計画の作成などを担当する政策委員会がある。両委員会はさらにいくつかの専門部会で構成される。 政策委員会の調査観測計画部会(部会長・日野亮太東北大学教授)は2月19日に部会を開催し、活断層型地震の長期評価作業を加速させることを決めた。同部会の発表によると、全国の主な内陸の活断層をエリアごとに長期評価する「地域評価」については、評価が未発表の地域でもできる限り速やかに情報提供を行うとした。具体的には、活断層調査と地震活動データ解析の2つの作業を行っていた従来の方法を見直し、時間がかかる活断層調査が終わらなくても地震活動データだけでも公表する。
海底活断層を対象にした「海域長期評価」は海底での活断層調査は直接観察が難しい。このため、まず日本海側の海底活断層の位置や形状、地震規模を表すマグニチュード(M)を先行して公表し、地震発生確率は算出でき次第公表する。作業に時間がかかる海域長期評価は九州、中国エリアの日本海側の長期評価が公表済みだったが、能登半島沖を含む近畿・北陸エリアは評価作業中だった。 調査観測計画部会の日野部会長は19日の部会終了後の取材に「地震が起こりやすい場所を見込むことができる研究を踏まえ、防災に役立つ情報を出していきたい」と話している。
長期評価は海溝型、活断層型ごとに
政府の地震本部が行っている地震の長期評価は「地震は海溝や活断層で一定期間を置いて繰り返し起きる」との考え方に基づいている。この評価は、地域ごとに予想される地震の規模や切迫度を出す。海溝型では千島海溝、日本海溝、相模トラフ、南海トラフ、南西諸島海溝などについて地震規模と発生確率が公表されている。確率は「10年以内」「30年以内」「50年以内」などとして数値を出している。 日本には陸域だけでも約2000の活断層があるとされる。地震調査委員会は主要活断層として114の活断層を選定し、海溝型同様に地震規模と発生確率を公表している。こうした長期評価は2011年の東日本大震災となった東北地方太平洋沖地震では「想定外」の地震規模や被害を生んだ教訓から、作業は最新の知見に基づいて見直されている。 能登半島地震では石川県輪島市で最大約4メートルの隆起が見つかった。また、輪島市から珠洲市にかけての海岸で約300年前の地震で隆起した痕跡がこれまでの研究で確認されている。内陸型地震が起きる周期は海溝型よりもはるかに長く千年~数万年とされる。現地を調査した専門家は300年前と今回で仮に同じ断層が破壊されたとすれば活断層型地震周期としてはあまりに短いと指摘している。 輪島市での4メートルもの隆起の規模からすると今回の地震は数千年に1回程度起きる大きな地震だったとの見方もある。地震を起こした活断層の場所や長さはある程度推定されてはいるが詳細は分かっていない。地震の長期評価の分野では未解明なことはまだまだたくさんある。