見つかった「隕石」のかけらは宇宙人の探査機?議論を巻き起こすハーバード大名物教授
地球外生命体につながる研究を巡って論争の的になっている人物がいる。ハーバード大の天文学科長を史上最長の9年間務めたアビ・ローブ氏(62)だ。メディアの寵児となった研究者への賛否は、いまも学術界で渦巻いている。(合田禄、藤崎麻里=朝日新聞記者) 【写真】海底から回収された火球のかけらとみられる小球の顕微鏡写真
米東部マサチューセッツ中心部から少し離れた住宅街にあるハーバード大学宇宙物理研究所の小さな講義室。 「さて、先週の続きから始めよう」 集まった10人ほどのスウェット姿の学部生たちの前に、紺のスーツに赤色のネクタイを締めたアヴィ・ローブ教授(62)は、宇宙物理について数式を使って語り始めた。 ローブ教授は自分のフォーマルな装いと学生たちのラフな服装のギャップを気にもとめず、遅刻した生徒にも気さくに話しかける。 ハーバードの天文学科長を史上最長の9年間務めたローブ教授は、ここ数年、米大手メディアに多数出演している著名人だ。 彼を取り上げたネットフリックスのドキュメンタリー番組も企画されているほか、個人的に興味を持った資産家からも豪華なディナーに招かれることもあるという。 ある「発見」がきっかけだ。 2017年、ハワイの天文台が太陽系外から飛来し、地球近くを通り過ぎた葉巻形の天体を観測した。 飛行速度などをもとに太陽系外から飛来した観測史上初の「恒星間天体」とみられ、ハワイ語で「最初の使者」を意味する「オウムアムア」と名付けられた。太陽の重力で軌道を変え、再び太陽系外に向けて飛び去った。その際に太陽の重力の影響だけでは説明できないほど速く飛行していることが判明した。 ローブ教授らは論文で、加速の理由として、太陽光の圧力を受けて進む宇宙帆船「ソーラーセイル」の可能性を挙げ、「突拍子もない話」と断った上で、「宇宙人の文明から、意図的に地球付近に送られた探査機かもしれない」と指摘した。そして、ほかにも太陽系外から飛来した物体がないかを探し始めた。 目を付けたのが、地球に飛来した火球などをまとめた米航空宇宙局(NASA)のカタログだ。 このカタログには、米政府が観測した速度測定値が載っている。そこから地球や太陽との相対速度を求め、ほかの恒星よりも速いスピードで動いていたものを探した。 ローブ教授は説明した。 「探すのはとてもシンプルだ。高校生でもできる。カードを1枚1枚をめくっていくようなものだ」