義母による「嫁いじめ」を夫に訴えても無関心。助けてくれない夫に慰謝料を請求できる?弁護士さんに聞きました
嫁VS姑の戦いを描いた『義母クエスト~結婚したらいきなりラスボス戦でした~』。人気ブロガー・かづさん原案の実話コミックエッセイで、嫌がらせの限りを尽くす義母がヤバすぎる…。 しかし、いくら身内とはいえ、常軌を逸した嫌がらせやモラハラは、「犯罪行為」に当たるのでは? と読んでいて気になりますよね。そこで今回は、本作の主人公・かづの事例を参考に、どんな罪にあたるのか、そしてどんな法的手段が取れるのか、弁護士法人プロテクトスタンスの弁護士・金岡紗矢香さんに聞いてみました。 【マンガ】『義母クエスト』を最初から読む ■『義母クエスト~結婚したらいきなりラスボス戦でした~』あらすじ かづは19歳の看護学生。入院患者だった男性と付きい始め、周りの反対を押し切って結婚することになりました。中でも特に二人の結婚に反対していたのが義母です。かづに対して常識では考えられないような数々の嫌がらせをしてくるため、新婚生活は心休まるものではありませんでした。 しかも、夫が勝手に申し込んだ市営住宅は義母の家のすぐ近く。義母に合鍵を渡されてしまい、突撃訪問を受ける日々が始まります。新居に押しかけた義母は隅々まで部屋の汚れをチェックしたり、自分の買い物を押し付けたり、挙句には「カーテンの趣味が悪い」と言ってハサミで切り刻んで捨ててしまったことも…! しかし、そのことを夫に訴えても、「おふくろも悪気があったわけやないやろ?」と妻を助けるどころか全く取り合ってくれません。そしてまた、新たな事件が発生するのです…。 かづの外出中、勝手にタンスを開けて、かづの下着をすべて捨ててしまった義母。しかも二度と着れないように、わざわざ切り刻んで捨ててありました。さらにかづに向かって「汚らわしい!」と暴言を吐いた義母。さすがに「悪気がない」はずがない言動に震撼します。 ■下着を勝手に切り刻んで捨てられた!これは犯罪でしょうか? ――作中では、義母が主人公の下着を勝手に切り刻んで捨ててしまいます。この場合、損害賠償を請求できますか? またこういった義母による嫌がらせ行為は法律上、犯罪に当たらないのでしょうか? 金岡紗矢香氏:刑法上は器物損壊罪に該当します。損害賠償については、下着が使用できなくなったことを損害として賠償請求できますが、購入した時から年数が経過すると時価額は下がります。ですから、下着の購入時の価格よりも賠償額は低くなるでしょう。 ■妻のピンチにも無関心な態度の夫。離婚や慰謝料請求はできる? ――妻が義母からしつこい嫌がらせを受けているにもかかわらず、夫は無関心な態度です。たとえば義母からのいじめを理由に離婚する、慰謝料を請求することはできますか? 慰謝料を請求できる場合、請求相手は夫と義母、どちらになるのでしょうか? 金岡紗矢香氏:夫婦には、お互いに協力して生活を助け合う義務(相互扶助義務)がありますから、義母からのいじめを阻止せず助けてくれなかったということを理由に離婚や慰謝料を請求できます。夫に対しては阻止できなかったこと、義母に対してはいじめを行ったことを理由に、それぞれに対して損害賠償を行うことになります。 *** 妻が義母からの常軌を逸したいじめに苦しんでいるにもかかわらず、何も行動をせず助けてくれない夫には、離婚や慰謝料請求という手段をとることができるそう。夫婦には「お互いに協力して生活を助け合う義務がある」ということを日頃から忘れずにいたいものですね。 【取材協力弁護士】 金岡 紗矢香(かなおか さやか)/弁護士法人プロテクトスタンス 弁護士・行政書士。国内大手飲料メーカーの勤務を経て、弁護士資格を取得。浮気・不倫といった男女トラブルや離婚問題、セクハラ・パワハラなどの労働トラブル、相続手続きなど、さまざまな分野に精通し、女性からの法律相談に幅広く応じている。現在、2児の母親として子育てにも奮闘中(第一東京弁護士会所属)。 文=宇都宮薫