「ミルク論争」母乳と粉ミルクどっちがいい? 理系博士が母親になって感じた結果は…
子育てに直面したときに、巷で耳にする、あんなウワサ、こんな説。それってほんとうに根拠があるの? 【漫画】卒乳も離乳食もトイトレも… 3人育てて分かった「悩む必要なかった子育ての悩み」 これまで、気になる論文を読んできた、情報理工学博士の山口先生が、世の中にあふれる「子育て説」を科学の面から一刀両断。現在子育てに悩んでいる方、なにかヒントが見つかるかもしれませんよ! 今回は、「ミルク論争」についてお話しします。
母乳 vs 粉ミルクの研究データはあまりない?
母乳か粉ミルクかという“ミルク論争”は、よく聞く話です。 結論は、「どちらでもよい」かと思います。ただ、免疫に差が生じることはあるので、そこは意識した方がよいでしょう。今日はそのあたりの話をしたいと思います。 実は、母乳がよいか粉ミルクよいか、という研究はあまり存在しないと聞いたことがあります。調べてみたところ、粉ミルクと母乳の栄養素の違いについての議論はありましたが……。 どちらかというと、昔は母乳しかなかったところ、この50年程度で急速に粉ミルクや液体ミルクが普及してきて、後遺症についてあまり経験値やデータが存在していないというところだと思います。
中国で起きた、粉ミルクの人為的トラブル
今のところ、母乳以外で育てた子どもに障害や問題が起きたりというのは、ミルク製造者のトラブルによるものが多いと思います。 2006年頃、中国で人為的なトラブルがありました。 中国の30万人程度の乳幼児の腎臓や尿管に、結石と呼ばれる固まりができ、血尿となってしまったのです。その30万人の赤ちゃんの共通点は、とあるメーカーの粉ミルクを飲んでいたこと。年商1500億円を超える大手乳製品製造メーカーでした。生産量は、1993年以来ずっと中国トップで、成分としては母乳に近いということで表彰をされるなど、評価の高いメーカーでした。 このメーカーは、検査時に基準よりたんぱく質量が低かった場合に、メラミンという化学物質を添加して、検査を通り抜けていたのです。メラミンはプラスチックの原料ですが、これを食品に入れるとたんぱく質を多く含んでいるように見せることができます。メラミンが入っているとは想定されていなかったため、検査を通り抜けてしまい、その噂が広がって、原乳業者ではメラミン添加は当たり前になったとのこと。他のメーカーでも、同様のことがまかり通ってしまっていたようで、中国内ではこのメラミン検査が追加されたとのこと。もちろん日本でもこの事件の後、メラミンを検査しています。