寺地拳四朗が夢見る「軽量級、もうひとりの怪物」とのビッグマッチ
「こんにちは!」 修羅場をくぐり抜けてきた男とは思えぬ笑顔でみなに挨拶。リングシューズに履き替えて、バンテージを巻き始めた。 次戦、13日のロサレス戦に向けて、今回は減量苦からも多少は解放され、順調に調整できていた。拳四朗より身長は7センチ、リーチは10センチも長いロサレス対策として、2階級上のバンタム級の選手を相手に、ここまで過去最多となる170ラウンド以上のスパーリングをこなした。 相手との距離感をより意識して、ここ何戦かのように「肉を切らせて骨を断つ」ような殴り合いではなく、タイミングで倒せるパンチで勝利を掴めるボクシングをテーマに戦うつもりだ。 拳四朗に、バムとの一戦についてたずねると、「いいっすね、そういうビッグマッチは、一度は経験したい」と答えた。さらにそれは加藤にとっても、拳四朗と一緒にかなえたい夢であることを伝えると「だったらなおさらですね。加藤さんにやれと言われたら自分はやりますよ。それはモチベーションも上がります。ラスベガスで実現したら、最高っすね」と答えた。 拳四朗はリング上でミット打ちをする練習生に遠慮するように、脇でゆっくりとシャドーを始めた。 加藤はキッズコースの子供たちを見送るとスポーツドリンクを一口だけ含み、すぐに拳四朗との練習に備え始めた。 ■寺地拳四朗(てらじ・けんしろう) 1992年生まれ、京都府出身。B.M.Bボクシングジム所属。2014年プロデビューし6戦目で日本王座、8戦目で東洋太平洋王座獲得し、2017年10戦目でWBC世界ライトフライ級王座獲得。8度防衛成功し9戦目で矢吹正道に敗れ王座陥落するも翌2022年の再戦で王座奪還。同年11月には京口紘人に勝利しWBA王座も獲得し2団体王者に。今年7月、フライ級転向発表し王座返上。今月13日、クリストファー・ロサーレス相手にWBC世界同級王座決定戦に挑む。通算成績24戦23勝(14KO)1敗 ■加藤健太(かとう・けんた)1985年生まれ、千葉県出身。2005年三谷大和スポーツジムから20歳でプロデビュー。2006年東日本新人王トーナメントはスーパーライト級で決勝進出。右拳の怪我で1年間ブランクの後出場した2008年同トーナメントはライト級で準々決勝進出し、のち日本王座に就く細川バレンタインと引き分けた。網膜剥離を煩い、24歳で現役引退。通算成績9勝(7KO)1敗1分。26歳で三迫ジムトレーナー就任。現在はチーフトレーナーとして名門ジムを支える。2019、2022年度最優秀トレーナー賞受賞 取材・文・撮影/会津泰成