年間スポンサー収入「0円」の競技団体も…障害者スポーツ「マイナー」に危機感 助成金頼み、窮状を打開できるか
障害者スポーツのうち馬術や射撃など「マイナー」とされる競技の運営が、助成金に頼らざるを得ない状況に陥っている。2021年のパラリンピック東京大会後、スポンサー支援などが低迷し、収入に占める助成金の割合が7~9割の競技も。9競技の団体は2023年6月に新組織「P.UNITED」を設立し、窮状の打開に向けて連携することでスポンサー収入などを増やしたい考えだ。パリ大会が閉幕し、4年後のロサンゼルス大会を見据えた取り組みが注目される。(共同通信=稲本康平) 【写真】知的障害の女性が出産「まさか娘が結婚して子どもを持つとは…」 「めちゃくちゃ心配」されたお母さんは…
▽年間スポンサー収入はフェンシング0円、アーチェリー30万円… 「助成金がいつまでも続く保証はない。このままでは運営が立ちゆかなくなる」。日本パラ射撃連盟の理事でP.UNITEDのプロジェクトマネージャー、野口尚伸さん(59)は危機感を募らせている。 P.UNITEDを設立したのは▽射撃▽馬術▽フェンシング▽アーチェリー▽カヌー▽カーリング▽パワーリフティング▽知的障害部門の卓球▽知的障害部門の競泳―の9競技団体。 各団体への9月11日までの取材によると、直近の事業年度収入は2770万~9340万円(平均5270万円)。助成金は1970万~8770万円(平均3960万円)だった。収入に占める助成金の割合はフェンシングが99%と最も高く、馬術は9割、パワーリフティングは8割、射撃と知的障害競泳、カーリングの3競技は7割を超えている。 スポンサー収入は▽フェンシング0円▽アーチェリー30万円▽パワーリフティング170万円▽馬術290万円▽知的障害競泳390万円。残る4競技団体は440万~700万円だった。 ▽資金難、競技に集中できず…選手の苦悩
射撃の運営状況は厳しい。2021年度に0円だったスポンサー収入は550万円に増えたものの、現在5人の強化指定選手でさえ、選手1人当たりで平均50万円程度かかる海外遠征では、選手への補助は10万円。国内遠征は原則全て選手の自腹という。 射撃はライフルやピストルで最大50メートル先の的を狙って得点を競う。銃口の角度や位置を定め、トリガー(引き金)を引く。球技のように体を大きく動かすことはないものの、高い集中力が求められる。障害があっても取り組みやすい競技だ。野口さんは「この競技が運営できなくなると、重い障害がある人の可能性を閉ざすことになる」とこぼす。 パリ大会の射撃に出場した岡田和也選手(55)は「資金難をダイレクトに感じ、強いストレスがある」と語る。 カヌーも同様の境遇にある。パリ大会に出場した宮嶋志帆選手(33)は、会社員として働いた給料から遠征費などを負担して競技を続けている。「競技に集中したいのに、お金のやりくりについて考えないといけない」と嘆く。 ▽助成金だけでは競技の普及や選手の発掘は難しく