ボクシング界”ミライモンスター”松本圭佑が逆転TKOでプロデビュー。元2冠王者トレーナーの父は「心臓が止まるかと」
「めちゃくちゃ焦ったけれど、組み立てるなら左ジャブ。基本に忠実にいこうと思った」 高いガードのポジションからスピードの乗った長い左ジャブが伸びる。 ステップとパーリングのテクニックで、勝負をかけてきた三宅の攻撃を外しながら、その左ジャブを的確に当てて、バランスを崩させる場面も。 「速いワンツーだよ。ワンツーで距離を取って!ワンツーから腹も!」 セコンドの父の言葉に背中を押されながら、威力十分の右のストレートが、2015年の西部地区新人王の顔面を残酷に痛めつけていく。 「左ジャブが当たると安心感、余裕ができてくるんです」 ペースを取り戻した松本は、前へ前へとアグレッシブに攻めた。左ジャブにワンツー。そこにボディを絡めたコンビネーションブローを次々にヒットさせ、2ラウンドには、右目尻を切り裂き、3ラウンドには左目上までカットさせた。 三宅は、20戦で9敗しているがKO負けは一度もないタフなボクサーである。通常ならダウンしてもおかしくなかったが、意地でも倒れなかった。もう心の勝負である。松本は打ちまくった。 4ラウンド。三宅は、ガードを固めて防戦一方となり、そこに松本の左のボディブローが炸裂。ベテランボクサーが頭を下げたところで、レフェリーの福地は、戦意喪失とダメージの蓄積を認めて試合をストップ。TKO勝利を宣言した。 「1ラウンドにダウンしたので僕が倒して終わりたかったんですが、20戦でKO負けしたことない選手にTKOで勝てた。そこだけを見ればよかったかな。いい経験になった。小さいグローブ(プロで使用する8オンス)の怖さを味わわされたが、プロのスリルを楽しめたところもある。プロはアマチュアと違って、お客さんが入って、声も届いていた。やっていて楽しかった」 リング上で松本は、ほとんど喜びを表現しなかった。 「今日は見せたかった理想のボクシングの50%くらい」 父は、スピードと幻惑のフットワークを武器にしたスタイリッシュなボクシングだったが、プロのリングで息子が見せたのは、対照的に前へプレスをかける超攻撃的ボクシングである。 「ダウンがなければ100パーセント(点満点)。お父さんとは、まったくボクシングスタイルが違うね。父は、せこいボクシング(笑)。あのせこさを今後、欲しいね」 2人を熟知する大橋会長は、そう親子を比較した。