ボクシング界”ミライモンスター”松本圭佑が逆転TKOでプロデビュー。元2冠王者トレーナーの父は「心臓が止まるかと」
プロボクシング界の“ミライモンスター“としてキッズの頃からメディアに注目されていた松本圭佑(21、大橋)が24日、後楽園ホールで56キロ契約の6回戦でプロデビュー、20戦9勝(1KO)9敗2分けのキャリアのある三宅寛典(32、ビッグアーム)を相手にクリーンヒットを浴びせ続け4回34秒にTKO勝利した。初回にダウンを奪われるスリリングな展開からの逆転勝利だった。父は世界挑戦経験が3度ある元OPBF東洋太平洋フェザー級、日本同級王者の松本好二(50)でジムのチーフトレーナー。祖父の弘さんも東日本ウエルター級新人王の元プロボクサーという親子三代の”最強DNA”を継ぐ松本は、セコンドについた父の存在があって立て直しができたという。またアマチュア”8冠”の中垣龍汰朗(20、大橋)も堀井翔平(29、トコナメ)を相手にスーパーフライ級6回戦でプロデビュー、2回に左ストレートでダウンを奪い一気にたたみかけてTKO勝利を飾った。
”アマ殺しパンチ”を食らって1回にダウン
まさかの一撃だった。 「心臓が止まるかなと思った。勝負だから起こりうることだとは考えていたが」とは、父の好二チーフトレーナーの回想。1ラウンドである。 一瞬、ノーガードとなる隙を見せた松本は、三宅の右のパンチを正面から、まともにもらい2人がもつれるようにしてダウンを喫したのだ。 「効いた。アマチュア時代を含めて初めてのダウン。気づいたら体が傾いていた」 松本はアマチュアで95戦してきたが一度としてダウン経験はない。 だが、この一撃を警戒していたのが、大橋秀行会長である。 「ああいう右のフックって、アマチュアからプロ転向した選手がよくやられるパターンなんだよね。相手も研究してきている。だから(フックに備えて)クビを鍛えておけと試合前から言っておいたんだ」 アマチュアでは、いきなりパンチを振り回してくるというケースは、ほぼない。プロ転向するアマエリートが慣れていないパンチである。注目のスーパールーキーに一泡吹かせようと狙っている側からすれば、プロの洗礼を浴びせるには、おあつらえ向きのパンチとなる。 「じっくりいこうと気がぬけていた」 松本は何かアクションを起こそうとしていたわけではなく、その瞬間、無防備に突っ立ってしまっていたのだ。 「プレッシャーを楽しもうと思ったが緊張もあった。いい勝ち方をしたいとの思いもあった」 キッズボクシングのU-15で5連覇。フジテレビ系のホープアスリートを紹介する人気番組の「ミライ☆モンスター」に10度も取り上げられ、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも、東京五輪のメダル候補として出演するなどメディアの熱視線があった。プレッシャーから来る緊張や力みが魔の空白を生み出したのかもしれなかった。 すぐに立ち上がった松本はセコンドを見た。 「セコンドの父の顔を見たら自然と落ち着いた」 カウンターパンチになっていなかったことも幸いした。本能で一瞬スウエーしていた。ここから最悪のシナリオを拒否して、逆転ドラマにつなげるのが、三代に渡るボクシングDNAを持つ松本の非凡さである。