ボクシング界”ミライモンスター”松本圭佑が逆転TKOでプロデビュー。元2冠王者トレーナーの父は「心臓が止まるかと」
子供の頃から父の職場である大橋ジムのリングのエプロンを机代わりにしていた。まるでボクシングと共に暮らすような日々を過ごし、元3階級制覇王者の八重樫東やWBA世界バンタム級スーパー王者、IBF世界同級王者の井上尚弥がいる「最高の環境」(松本)の中でボクシングを始めた。東農大に進み、東京五輪出場を目指していたが、コンディション不良のため予選で敗退して夢破れ、悩んだ末に井上尚弥の「プロでやるなら早い方がいい」の助言が決め手になってプロ転向を決めた。 松本は、プロデビューを前にこんな話をしていた。 「小学生の頃からリビングのテレビで父の現役時代のビデオ映像がよく流れていた。世界戦の映像です。僕にそれを見せたかったのかもしれませんが、世界王者になって欲しかった、と、映像を見ながら僕も悔しい思いになった。父が果たせなかった夢を果たすことはプロに転向する大きなモチベーションのひとつ。父を超えるイコール世界チャンピオンです。父が取れなかったフェザー級で、世界挑戦することにロマンがあるかもしれません」 本来なら5月28日がデビュー戦となるはずだったが、新型コロナウイルスの影響で3か月延期になった。だが、父の果たせなかった悲願を成し遂げるという決意があるからモチベーションが下がることなどなかった。 デビュー戦では、ディフェンス面での未熟さや、打ったあとの頭のポジションなどの課題も露呈したが、荒々しく魂を剥きだしに倒しに行くボクシングスタイルは、「金の取れるボクシング」に見えた。今後、KOシーンを続けていけば人気が出るだろう。 この日の後楽園は、新型コロナの感染予防対策から、入場人数が制限され、525人の観客しか来場できなかった。松本の夢は、後楽園の隣にドンとそびえる5万人以上収容の東京ドームでメインを張れる世界王者である。 「目標は世界チャンピオンですが、あんなミスをしていたら世界チャンピオンなんて言っていられない。組んでもらった試合をしっかり勝って、世界チャンピオンが目標だと言えるようにしたい」 ホロ苦いデビュー戦を経験した“ミライモンスター“は、その”ミライ”の3文字を取るための力強い第一歩を踏み出した。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)