なぜFC東京のスーパールーキー松木玖生がパリ五輪狙うU-21日本代表に“飛び級抜擢”されたのか
昨年5月に福島・Jヴィレッジで行われたU-18代表候補合宿。最終的には負傷で辞退したものの、当時U-18代表を率いていた大岩監督は18歳になったばかりの松木を招集した。個人的に松木に注目していたと明かす同監督は、青森山田のキャプテンとして夏のインターハイ、冬の全国高校選手権の二冠を獲得し、その間には大抜擢されたU-22代表の初陣でゴールまで決めた軌跡を常にチェックしてきた。 「彼がどのようなレベルで、どのように成長しているのかはずっと追っています。自チームで活躍している、いまが旬の選手であるのはもちろんのこと、昨年からの彼のサッカーに対する振る舞いも非常に高く評価している。われわれのグループでやっていける、やっていってほしいという期待を込めて今回招集させてもらいました」 全国高校選手権を制し、心身両面のモードをアマチュアからプロへと一気に引き上げる直前の1月中旬に、松木はこんな抱負を語っていた。 「自分は負けず嫌いですけど、それは選手ならば誰しも持っている。それ以上に熱いプレーヤーなので、ピッチ上で味方を鼓舞しながらチームを勝利に導きたい。FC東京の選手たちも自分のプレースタイルをまだ何も知らないと思うので、そこはキャンプから貪欲に自分を出して、特長をいち早くつかんでもらいたいと思っています」 幾度となく「ビッグマウス」と形容されてきた松木は、一方で自分自身の性格を「実は人前で話すのがあまり得意ではない」と苦笑したことがある。 「でも、いざサッカーとなると年齢は関係なくなるし、自分の思っていることを言うというか、要求していきたい。それがサッカーで一番大事なところだと思うので」 メンタル面のタフネスぶりを象徴する言葉は、プロで何年もプレーしているかのような立ち居振る舞いとして具現化され、キャンプイン当初は「成長を見守ってほしい」と周囲を諫めていた、スペイン出身のアルベル新監督(53)を魅了した。 松木を先発に抜擢した川崎フロンターレとの開幕戦直後。バルセロナの下部組織でスカウトやコーチ、ディレクターを務めた新指揮官は松木に対してこう言及した。 「彼のプレーには満足しているし、称えたいと思う。彼はもっともっと成長する必要があるが、そう遠くない将来に日本サッカー界へ大きな喜びを与えてくれるだろう」 川崎戦こそ0-1で敗れたFC東京だが、活動再開後はリーグ戦でセレッソ大阪とサンフレッチェ広島に連勝。インサイドハーフとして2戦連続で先発フル出場した松木の総走行距離は、前者で12.579km、後者では12.386kmとともにチーム1位を記録し、スプリント回数も2試合で「22」ずつをマークした。 データを介してフィジカル面でのタフさも示した松木は高校時代から海外志向が強く、3年生に進級する直前にはリーグアンのリヨンの練習にも参加している。未来へ向けられる視線の高さも、U-21代表にプラスになると大岩監督は目を細めた。 「彼の向上心は非常に大きな武器であり、海外クラブから来る選手たちとの関係性でも高いレベルで融合していけると思っている。彼の姿勢や発言が、おそらくチームを高いレベルに引き上げてくれるだろうと期待しています」