なぜスーパールーキー松木玖生がFC東京の今季初Vを牽引できたのか?
明治安田生命J1リーグ第3節が6日に行われ、新型コロナウイルスのチーム内クラスター発生で、2月18日の開幕戦直後に活動休止を余儀なくされていたFC東京がセレッソ大阪を1-0で振り切り、公式戦3戦目にして今シーズン初勝利をあげた。 敵地ヨドコウ桜スタジアムに乗り込んだFC東京は前半23分、青森山田高から加入したインサイドハーフの松木玖生(18)が敵陣で強烈なプレスを一閃。奪ったボールをFWアダイウトン(31)がつなぎ、FW紺野和也(24)が値千金の決勝弾を決めた。 アンカーの青木拓矢(32)が2度目の警告を受けて退場になった後半16分以降は、松木はポジションをボランチに下げてデビュー2戦目にして初の先発フル出場。攻守両面で奮闘した大物ルーキーを、今シーズンから指揮を執るスペイン出身のアルベル監督(53)は「素晴らしい形でチームに貢献してくれた」と手放しで称賛した。
相手守備陣を崩壊させた戦慄のプレス
相手が見せた一瞬の隙を、松木の鋭い戦術眼は見逃さなかった。 両チームともに無得点で迎えた前半23分。左タッチライン際、ハーフウェイラインから敵陣へ少し入ったあたりで、松木は前方のアダイウトンへ浮き球のパスを送った。 しかし、セレッソの選手たちに囲まれたアダイウトンがボールを失う。そして、こぼれ球を収めた右サイドバックの松田陸(30)がわずかに背中を見せた直後だった。 まるで獲物を狙う獣のように、松田の死角から松木が一気に距離を詰めた。瞬時にモードを攻撃から守備に切り替え、繰り出された強烈なプレス。松田が持つボールに突っかけた松木は勢い余ってそのボールの上に足を乗せ、ピッチ上に倒れ込んだ。 こぼれ球を拾ったアダイウトンがすかさずドリブルを仕掛け、左角あたりから相手ペナルティーエリア内へ侵入。マイナス方向へ折り返したグラウンダーのクロスを、FWディエゴ・オリヴェイラ(31)が意表を突いてスルーした。 この時点でセレッソの守備網は完全に破綻していた。大きなスペースが生じたゴール正面へフリーで走り込みながら、紺野はゴールまでの“絵”を描いていた。 「アダ(アダイウトン)がボールを持ったときに自分がフリーになっていたので、ボールが来ればしっかりと止めて、左足でシュートを打って決めるイメージができあがっていました。ぴったりとトラップしないと相手にカットされると思っていたので集中して止めて、あとは右のサイドネットを狙って流し込むだけでした」 身長161cmの小兵・紺野が利き足の左足で決めた、今シーズンの公式戦3戦目で生まれたFC東京の初ゴール。攻守両面でセレッソを圧倒した前半から一転、青木が2度目の警告を受けて退場した後半16分以降は形勢が逆転し、猛攻にさらされ続けながらも虎の子の1点を死守した先に、待望の今シーズン公式戦初勝利が待っていた。 「主審の笛が鳴った瞬間に、それが試合終了を告げる笛なのか、あるいはファウルの笛なのかがわからなかった。ここまでの2試合でいいプレーをしながらも結果が出なかったことが悔しかったので、それを一掃する形で勝利できたことを嬉しく思う」