キャロットケーキが人気急上昇中!「キャロ活」するほどマニアもいる理由
キャロットケーキが人気の3つの要因
人気の要因の一つは、冒頭で紹介した対談にもあったように、レシピによって違う味わいを楽しめる多彩さだろう。ナッツやスパイスが違えば香りや味わいが変わるし、ニンジン、ナッツ、ドライフルーツの刻み方で食感も変わる。工夫された形は目を楽しませてくれる。フロスティングも生クリーム、クリームチーズ、シンプルに粉砂糖など、それぞれ異なる味わいを教えてくれる。 二つ目は、ヘルシーさ。スイーツはカロリーが高く食べる際に罪悪感を伴うことが多いが、ニンジンがたっぷり入ったキャロットケーキは、小麦粉の量が少なめになることもあって、健康に良いと言い訳できる。ニンジンは野菜の中でも糖分が高いし、使われているフロスティングによっては、糖質が多いかもしれないのだが。 三つ目はヌン活の影響だ。特に東京でイギリス菓子の存在が薄かったのは、そもそもティールームが少なかったからだろうが、近年の盛り上がりは「迷走」と言いたくなるほど、各店・ホテルが紅茶ではなくスイーツなどの食べ物推し。当然、そこで出されるお茶菓子は注目される。ヌン活を優雅な社交空間と捉える人もいるだろうが、そこでイギリスのスイーツや食文化に関心が向く人もいるはずだ。 その影響か、近年は百貨店が開催する英国展も大人気で、順番待ちになり会場になかなか入れてもらえない、中は大混雑という場合もある。スコーンが大流行しているので、スコーン目当ての人も多いが、キャロットケーキも人気である。 フランスの生ケーキは、いくつもの層を重ねて複雑な味わいにしたものが多く、プロならではの技が詰め込まれている分、価格も高い。味わいは素晴らしいが、テイクアウト中心なので運ぶのに気を使うし、懐具合もカロリーも気になる人がいるだろう。しかし、イギリス菓子は基本的に家庭料理として作られてきたものが中心で、味も調理法もシンプルで財布にも優しい傾向がある。 また、最初は今はなくなったディズニーチャンネルで、最近はNHKで放送されているイギリスの国民的人気番組『ブリティッシュ・ベイクオフ』から、イギリス菓子の世界に関心を深めた人もいるのではないか。ヌン活およびイギリス菓子文化への関心も、キャロットケーキの人気も高めていると思われる。 また、キャロットケーキは韓国でも流行しており、韓流ファンが注目している側面もあるだろう。 キャロットケーキは、イギリスで中世から食べられていたキャロット・プディングが原型と言われている。『イギリスお菓子百科』(安田真理子、ソーテック社)によると、18、19世紀のレシピ本で、ひんぱんに紹介されるようになる。この時期、イギリスでは主婦層が誕生して家庭料理が著しく進化した。オーブンが普及したこともあり、現在に続く家庭料理としてのスイーツ作りも活発になったのだ。 その後、第二次世界大戦の砂糖不足で政府が奨励したことから流行し、1960~1970年代にはアメリカで流行し、アメリカ流のクリームチーズのフロスティングが、イギリスでもスタンダードになった。 そんな歴史も味わいつつ、キャロットケーキを楽しんではいかがだろう?