森山未來が巡る淡路「実は住もうと考えたこともあるくらい興味があって、奥深い場所」[FRaU]
自分が遊べるまちを広げていく
2022年から始動した「Artist in Residence KOBE(AiRK)」にかかわって、神戸と東京を行き来する森山さん。地元での取り組みについて訊いた。
「もともとアーティスト・イン・レジデンスが神戸にあったらいいんじゃないかと提案はしていたんですが、その実現に動いた運営メンバーがいて、いまは彼らと一緒にプロジェクトを動かしているところです。 じゃあ、何のためにアーティスト・イン・レジデンスがあるのかっていうと、たとえばそれまで神戸を知らなかった国内外のアーティストが神戸に1ヵ月滞在したときに、そのアーティストは神戸に何かしらを見るわけです。こういう文化や振る舞いがあるんだと。それが作品に転化されて、昇華されていく。アーティストって、そういう発見をする能力があるからこそ、作品にも強度があると思うんですよね。 彼らのアウトプットに触れることで、地元の人も自分たちの土地がもつ可能性を自覚できる。そういうことを繰り返していくうちに、神戸で暮らす人たちやアーティストの間に文化の土壌ができあがっていくし、関係人口が増えて外ともつながっていくんじゃないかと。そのパーツとして、あるいはハブとしてAiRKがある。これは即時的な成果が得られる類いのものではなくて、持続させていく以外に効果は出せない。ある種の運動のようなもの。それを存続させるため、外に開いていくために、企画を考えつづけているところです」
淡路の大見山には、第二次世界大戦で亡くなった約20万人の学徒を弔う記念塔がある。建築家・丹下健三の作品。空に向かって屹立するコンクリート壁は、学生の本分、学問の象徴であるペン先を模している。戦中、淡路には日本軍の飛行場が置かれていて空襲の標的にもなった。広場からは南あわじ市の港町や大鳴門橋、さらには四国の徳島まで見わたせる。/若人の広場公園
森山さん自身、AiRKにかかわるなかで、神戸市を中心にいろんな人と出会う機会が増えて、手応えを感じているという。 「たとえば、兵庫は5つの国がひとつの県になった多様な場所だけど、実はそれって神戸市の構造にも似ている気がするんです。 神戸は、三宮のような都会があって、北区のような山や農地もあって、垂水や須磨のような海のまちもあって、その間には下町もある。それらが車で30~40分の距離に集まっている。 逆にいうと、多様だからこそ隣の人が何をやっているのかわかりづらい面もある。それぞれのまちでやっていることって、個々に面白いけど、『これ、どうつながったらええの?』って思う。本来的に新開地と北野が交わることはないのかもしれない。淡河と塩屋をムリにくっつける必要はないかもしれない。ただ僕が単純に、それぞれの場所で生きる人たちに興味をもって、一緒に何かやろうよって思っているだけで。 それは地元のために動いてるわけではなくて、自分が神戸で過ごして、神戸で遊ぶからにはどうしたらよいかと、ただ個人的な衝動で動いているだけなんです」
森山未來(もりやま・みらい) 1984年、兵庫県生まれ。俳優、ダンサー。5歳からダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。“関係値から立ち上がる身体的表現”を求めて、映画、舞台、アートプロジェクトなど国内外で活動する。2022年、神戸市の「Artist in Residence KOBE(AiRK)」の設立に参画。 ●情報は、『FRaU S.TRIP MOOK 未来へつづく旅「神戸・兵庫」へ』発売時点のものです(2023年12月)。