森山未來が巡る淡路「実は住もうと考えたこともあるくらい興味があって、奥深い場所」[FRaU]
現代の眼差しで再びその土地に出合う
1960年代、港湾開発のために淡路の山が切り崩され、大阪湾にその土砂が運ばれた。その跡地につくられたのが、建築家・安藤忠雄が設計した複合施設〈淡路夢舞台〉。敷地内には、剥き出しになっていた山肌がやがて緑に覆われるように設えられた100の花壇や、太陽の運行で時を報せる日時計があり、100年先、1000年先の遺跡のよう。/淡路夢舞台 淡路市夢舞台2
淡路を南から北までめぐるなかで、森山さんはそのときどきで即興の舞を見せてくれた。それは声もなく風をつかむようにはじまる。呼吸をするように、とても自然に。身体が旋回して、地面を擦る足音と木々の葉擦れだけが耳に届く。場の空気を掌握するような強さがあるけれど、それでいて周囲に呼応するようなやわらかな舞でもある。土地の手触りをたしかめているようにも映る。
ヒラマツグミ一級建築士事務所が運営する〈HIRAMATSUGUMI〉は、淡路の工芸品や食に出合える空間。ゴウダツバサさんのカフェ〈mochitsu motaretsu〉で、この日のお菓子、淡路産のユズや、仕上げに焙煎サクランボをつかったショコラテリーヌをいただく。ギャラリーは元牛舎を改装していたり、庭には地元の檜やいぶし瓦をつかった「淡路の小屋」があったりと、建物も楽しめる。/HIRAMATSUGUMI 洲本市中川原町中川原555
淡路で記憶に残った場所を尋ねると、こんな答えが返ってきた。 「地元に根ざして地域資源を利活用している人たちに惹かれます。たとえば、淡路の主要な産物に瓦や線香がありますが、昔と比べて瓦屋根や仏壇がある家が減っているなかで、瓦を床材や器にしたり、現代の感覚でお香を再考したり、土着のものを活かしたものづくりをしている人たちがいて、そういうものを僕は面白いと思う。 情報技術が発達したいま、都会を経由しないと外に出せないという時代ではないことに、みんな気がついていますよね。地域からグローバルに届けられる。神戸にいたら仕事が来なくなるんじゃないかとか、そういう世界線で生きていない。それは僕だけじゃなくて、淡路でも、神戸でも、そういう人たちがいると感じます」