考察『光る君へ』7話 勇壮な打毬試合に拍手!道長(柄本佑)に絶望するまひろ(吉高由里子)の姿にタイトル「へ」の謎に思い当たる
怖い道隆、チョロい道兼
兄・道隆(井浦新)から誘ったのであろう、弟・道兼(玉置玲央)との月見の酒宴。 道兼……チョロい。愛情と理解を示してくれる相手に対してここまで無防備な人間は到底、政治家には向いていないだろう。そのような男になるよう幼い頃からコントロールしてきた兼家が、そして弟を陥落させた道隆が恐ろしい。前回6話で次世代の公達を取り込むために呼びかけたときといい、相手が一番ほしい言葉で的確に心を打つ。 「お前を置いてはゆかぬ」。 ……のちのことを思うと、ちょっと怖い台詞でもある。 第6話までは父上のためなら汚れ役でも構わぬという道兼だったが、これでは父だけでなく兄のためならなんでもやるとなってしまうだろう。第4回レビューで触れたが、父の兼家がその次兄・兼通との確執で出世を阻まれていた当時、道隆は20代だった。兼家の子らで誰よりも兄弟間の力関係を意識しているのは道隆ではないか。 いや、道隆が弟思いで、心から道兼を慰めているだけという可能性もある。というか、そうであってほしい。そうでなければ道兼が哀れだ。
お口がブレない公任
投壺(とうこ)。蹴鞠、双六といい、後の場面の打毬といい、平安時代の貴族たちの遊びが出てくる回である。妹・忯子の死を静かに嘆く斉信(金田哲)に公任(町田啓太)が、「身罷られる前に、偉くしてもらっておけばよかったな」。 「もうそんなことどうでもよい」 「……すまぬ(ちょっと反省)」 今週も公任のいらんこと言うお口がブレない。このままどれだけ軽口のバリエーションを広げていくのか、ちょっとわくわくしてきている。 道長「入内はおなごをけして幸せにはせぬと信じている」。 しかし、身内の女達が入内し皇子を産むことが一族の栄達に直結すると、ここにいる誰もがわかっているのだ。
貴族に仕える武者の存在
「安和の変」、「アキの女御」など散楽一座のこれまでの藤原北家シリーズと比較しても、評判を呼んでか集客がよい「狐と猿の物語」。人垣の向こうから、わざわざ高い所に登って見る客までいる。しかし、耳目を集めれば、届いてほしくないところにまで届いてしまうのは、平安時代も現代のネット社会も同じである。右大臣家の武者たちが上演妨害に殴りこんできた。 ここで、おお! と身を乗り出して見たのは、その武者たち。そう、武者・武士とはある日突然ひょっこりと歴史の舞台に出てきたわけではないのだ。大河ドラマでは『平清盛』『鎌倉殿の13人』など、平安時代末期の武士が主人公の作品があり、彼らが武家社会の礎を築いていき、その中でもがく経緯が描かれた。その更に前の段階、貴族に仕える武者の存在は、大河ドラマファンとして見逃せない。道長を主人として仕えた大江山酒呑童子退治伝説の源頼光も、はじまりの武者の一人である。いずれこの作品に出てくるかもしれない。