寝室は「4.5畳」のスペースがあれば十分。狭くすることで得られるメリットも
引っ越しやリフォーム、模様替えなどで理想の家づくりを考える人も多いのではないでしょうか。たとえば寝室。広々としているといい空間になりそうと考える人は多いかもしれません。でも、じつは「寝室は広い方がいい」という考えは、思い込みの場合も。教えてくれたのは、『家は南向きじゃなくていい』(講談社刊)の著者で、2000軒以上の家を設計してきた一級建築士の内山里江さんです。本当に寝室は広くなくてはいけないのか、考えてみませんか?
寝室に広さは必要?昨今増えるコンパクトな寝室
「結論を言うと、寝室は小さくていいんです」。そう語るのは、一級建築士の内山里江さん。 「私は寝室は”寝るだけ”の部屋で十分と考えています。そんな寝室に広い空間を使うのは、少しもったいないと思っています。たとえば、実家を思い返して寝室は広いものと思い込んでいる人は多いかもしれません。 たしかに、昔の家は今より気密性と断熱性が優れていなかったため、冬は寒く、夏は暑かったので、寝室や個室など、それぞれの空間にこもって過ごすのが当たり前でした。そのため、部屋を充実させるためにも広さを求める傾向があったのだと考えられます」 昨今の住宅では、個々の部屋にそこまで広さは求められなくなったと言います。 「たとえば、少し前の家には寝室にクローゼットがあるのが一般的でした。しかし、最近は動線的にもランドリーコーナーに近い場所にファミリークローゼットという形で服の収納場所を設計することが、私の場合では増えています。つまり寝室そのものが寝るだけのスペースとしてコンパクトにつくられることも多いのです」 たとえばマンションなどでも寝室と呼ばれる部屋が思っていたより狭いと感じる人は多いかもしれません。そういった場合、どのような寝室づくりをすればいいのでしょうか。
寝室は4.5畳あれば十分
「寝室に6畳以上の広さを求める人がほとんどですが、4.5畳あれば、キングサイズよりも大きいベッドを置くことが可能です。そのサイズ感なら、3、4人の家族であれば、全員寝ることは十分にできますね」 とはいえ、寝室をスタイリッシュに決めたい人も多いはず。ベッド以外にも「ランプを置くためにサイドボードが必要」「クローゼットは必要はあったほうが便利」と考えてしまいます。 「もちろん、ホテルの寝室のように、サイドボードや間接照明、小さな腰掛けや一人がけソファなど、こだわりにこだわった空間が欲しいという方は、それはすてきな住まいだと思います。家のどのスペースに価値を置くかは、その人次第であり、その自由さこそが、家づくりの魅力でもあるからです。 でも、ほかの家全体のスペースの問題で寝室にそこまでスペースをさけない方もいらっしゃるでしょう。もしそこで無理に寝室の広さを優先してしまったら、本来削れるはずのスペースが必要になり、リビングやほかの個室の分を削らざるを得なくなってしまうことも考えてはいかがでしょうか」 家のスペースが限られている人にとっては、「寝室は寝るだけの場所」と割りきり、コンパクトにするという選択肢もあります。 「スペース問題以外にも、寝室をコンパクトにすることのメリットはあります。ほかの空間を広くできるだけでなく、寝室の掃除そのものがラクになったり、家具を買うお金を節約できたりすることにもつながります。ぜひひとつの案として参考にしてみてください」 なんとなく「こういうものだから」という理想も、新たな視点を持つことで、よりよい暮らしにつなげられるかもしれませんね。
ESSEonline編集部