考察『光る君へ』7話 勇壮な打毬試合に拍手!道長(柄本佑)に絶望するまひろ(吉高由里子)の姿にタイトル「へ」の謎に思い当たる
まひろの脚本と直秀の笑顔
道長から離れる……彼への思いを断つために、他に打ち込み、脚本づくりに邁進しようとするまひろ(吉高由里子)。散楽一座の上演作品はずっと同じアキの女御ネタだったから、新しい物語が一座にも観客に喜ばれるのはわかる。 猿役の役者たちが胸に藤の花をつけているから、観客には猿=藤原、右大臣家と伝わるのだね……。強欲のあまり、馬糞を頭にいただいて喜ぶ猿の姿に大衆は大ウケ。 自分の脚本への観客の反応のよさに嬉しくなるまひろ、その笑顔に思わず顔をほころばせる直秀。この一瞬のシーンがすごくいいので、再放送やNHKプラスで是非見ていただきたい。狐を演じていても、その瞬間だけ直秀に戻るのが素敵なのだ。
日記には書かぬ!
忯子を喪い、何も手につかない花山帝。御簾の内に寵臣の義懐(高橋光臣)と惟成(吉田亮)、為時(岸谷五朗)を入れている。東宮時代からの習慣であり、そして失意の淵にあるとはいえ、第3話で円融帝(坂東巳之助)が体調不良時であっても、相手が信頼篤き実資(秋山竜次)でも、昼御座(ひるのおまし)で御簾ごしに対面していたことを思うと、花山帝の子どもっぽい公私混同ぶりが際立つ画面。 「忯子に会いたいなぁ」。この小さな台詞で幼稚さと、晴明の言う通り「ふたたび女にうつつを抜かす」ことを予感させる本郷奏多がよい。そんな帝に篤く信頼され重用される義懐。 そしてそれを自宅で蹴鞠をしながら愚痴る実資。蹴鞠の達人だと伝わる彼が、微妙に下手なことに笑ってしまった。いや、こうやって自主トレして徐々に上手く、達人級になっていくのだろう。双六遊びをしている実資の妻・桐子(中島亜梨沙)は「あなたそれ、日記に書きなさいよ。もう聞き飽きた」と言う。実資が現代に生きていたらSNS、ブログに詳細に長文でめっちゃ書くタイプだろうな……一人称は「小生」かなと思いながら観ていた。「日記には書かぬ!書くに値しない!」と腹立たしげに言う彼だが、日記『小右記』にはこの年、寛和元年の除目で義懐が参議に昇進したことについて「奇しむべし、奇しむべし(奇々怪々である)」と……結局書いちゃっているのである。