なぜ渋野日向子は我慢のゴルフで全米女子OP3日目も首位キープができたのか…「奇跡的にまだ一番上にいる」
例えば2番(パー4、394ヤード)、5番(パー5、458ヤード)、11番(パー4、409ヤード)でともに2打目をグリーン周りのガードバンカーへ入れてしまった。そして、3度のバンカーショットをすべてピンそばにつけて、2番と11番はパーをセーブし、5番では唯一のバーディーを奪った。 ゴルフのデータのなかにサンドセーブ率がある。グリーンサイドのバンカーに入れてから2打以内でカップインした回数を示すものだ。渡米する直前に渋野が出場し、国内外を合わせて現時点での今シーズン最高位となる3位タイに入った国内ツアー最終戦、LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップでは5度あったガードバンカーショットで、サンドセーブ率は0%に終わっていた。 3日目ではその後も14番と18番でも2打目をガードバンカーに入れ、ともにサンドセーブを達成できなかった。それでも5度のうち3回でサンドセーブし、60%の達成率をあげた数字を、勝負がかかる最終日へ向けて渋野は努めてポジティブに受け止めた。 「中身と内容を見ていくといいところもたくさんあるので、マイナスなところばかりじゃなくてプラスのところも後でしっかり見て復習して、明日に繋げていければいいかな、と」 ガードバンカーからのショットだけではない。10番(パー4、413ヤード)、13番(パー5、502ヤード)、17番(パー4、386ヤード)では絶妙のアプローチショットも成功させた。すべてパーとしたなかで、ロングホールでは貪欲にバーディーを狙っていただけに、2mにつけた上りのバーディーパットがカップ左をわずかにかすめた瞬間に、パターヘッドを左足で蹴る悔しさものぞかせた。
「こうして振り返ってみると、アプローチ、何か上手くなったのかな、とちょっと思っていいのかな」 ホールアウト後には笑顔を浮かべながら気持ちを切り替えた渋野は、2日目を終えた時点で自らに言い聞かせていた「我慢」の二文字をショートゲームと、2番以降は3パットを叩かなかった執念を介して実践。それらの結晶としてキープできた最終日の最終組スタートという状況をかみしめながら、本当の意味での勝負がかかる最終日へ向けて決意を新たにした。 「奇跡的にまだ一番上にいると思うので、明日もその位置で終われると応援してくださっている人たちにとってすごく嬉しいし、私にとっても嬉しいんですけど、やっぱり目の前の一打にしっかりと集中して、ひとつひとつ頑張っていくしかないと思っています」 3日目の夜から再び降り始めた雨が、現地時間13日の午前中には雷雨に変わる天気予報も出ている。グリーンの状態を含めて、ただでさえ距離が長いサイプレスクリークコースの難易度がさらに上がる恐れもある。それでも、渋野自身が簡単に勝たせてくれる舞台だとは思っていない。 目の前で何が起ころうともうろたえない覚悟と決意を胸中に秘めながら、過去に日本人選手が誰も成し遂げていない、2度目の海外メジャー制覇の偉業に挑む。