体調の波を穏やかにするカギは「脳と血行」? 女性ホルモンによって起こる“ゆらぎ”を制するためのQ&A
女性には、生理周期という月単位の波と、初潮から閉経までの大きな人生の波がある。それらの鍵を握る女性ホルモンについて知り、積極的にコントロールしていける自分になろう!
ホルモンは生命維持の要
「生理前の異常な食欲も、生理中のイライラも、全部ホルモンのせい!」。これ、間違ってはいないけれど、ホルモンをことさらに悪者扱いするのはちょっと待って。 「眠気を誘うメラトニン、幸福感をもたらすセロトニンなど、私たちの体は100種類以上のホルモンに支えられ、生命を維持しています。脳などでつくられたホルモンは、体を正常に保つ鍵のようなもので、血流に乗ってターゲットの臓器に運ばれると、そこにある鍵穴(受容体)にピタリと収まり、それぞれの役割を果たします」 そう教えてくれたのは、聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田の八田真理子院長。では、私たちの体調や気分に深く関係している女性ホルモンとは、いったい何? 「女性ホルモンと呼ばれるのは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)で、この2つのホルモンの分泌量が毎月一定の周期で変化し、排卵や月経が起こります」 女性には、生理周期による月単位の好不調の波と、初潮を迎えた10代から閉経後まで、ライフステージという視点から見た大きな変化の波がある。後者で重要になるのは、エストロゲンだという。 「プロゲステロンは、排卵後に増えて受精卵が育つ環境を整える、妊娠を維持するためのホルモン。PMSが重い人はプロゲステロンの感受性が高いと言われています。一方、エストロゲンは、微量で機能を発揮する鍵穴が全身にあり、美や健康を支える守り神のような存在です(下記、『全身で働く「エストロゲン」』参照)」 エストロゲンの分泌量は、一生でティースプーン1杯分ほど。初潮を迎える頃から閉経するまで、年代によって分泌量は変動し、その変化が女性のライフステージの大きな波に強く影響している。 「エストロゲンは35歳頃をピークに徐々に減っていき、45歳で更年期を迎えるとさらに減少。閉経後はほぼゼロになります」 全身に作用するエストロゲンだが、分泌量が多ければ多いほど、肌の調子や体調が上向くかと言えば、そうとも限らない。 「エストロゲンは車で言うならアクセル。ブレーキはプロゲステロン。女性の健康はこの2つのホルモンがバランスよく働くことで維持されています。エストロゲンが多すぎるとホルモン感受性の乳がんや子宮体がんのリスクを上げてしまうこともあります」 自身のエストロゲンの分泌量を知る方法はあるのだろうか。 「女性ホルモンはごく微量なうえ、一日の中でも、分泌量に波があります。ですから、血液検査ですらあくまでも目安。一度の検査の数値だけで判断するのではなく、経時的に値を見て判断する必要があります。ちなみに、卵巣以外では少量ですが、脂肪細胞からもエストロゲンが分泌されます。更年期になるとお腹周りがふくよかになり体重が増えやすくなるのは、減少してくる卵巣からのエストロゲンを補うためと考えられます。更年期以降は、ホルモンの視点から見れば“ちょいポチャ”がベストです」 ティースプーン1杯でこれだけの効果! 全身で働く「エストロゲン」 全身 □ 皮下脂肪を蓄え、女性らしい体つきをつくる □ 肥満に繋がることも 脳 □ 海馬への血流を改善し、記憶力を高める □ セロトニンの正常な働きを守る 髪・肌 □ 毛髪の成長をサポートする □ 線維芽細胞を活性化させ、肌の潤いやツヤ、ハリを保つ 乳房 □ 乳腺を発達させる □ 乳がんリスクを高める 子宮 □ 受精卵が着床しやすいように、子宮内膜を厚くする □ 子宮内膜が厚くなりすぎると、生理が重くなる □ 子宮体がんのリスクを高める 骨 □ 小腸でのカルシウム吸収を促進する □ 骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する 血管 □ コレステロール値を下げる □ 血管の弾力性を保ち、動脈硬化を防ぐ