体調の波を穏やかにするカギは「脳と血行」? 女性ホルモンによって起こる“ゆらぎ”を制するためのQ&A
波を穏やかにする鍵は脳と血行
では、女性ホルモンが過不足なく分泌されるかどうかは、何によって決まるのだろうか。 「ごく簡単にメカニズムを説明すると、脳からの『女性ホルモンを分泌して』という指令で、卵巣からエストロゲンやプロゲステロンが分泌され、その刺激で変化した子宮内膜の状態が脳にフィードバックされ、また指令が出されます。 脳で指令を出す視床下部は自律神経の中枢でもあるので、自律神経のバランスが崩れていると、女性ホルモンの分泌にも影響が出ます。反対に、加齢によって卵巣機能が低下しエストロゲンが減少すると月経が不順に。フィードバックにより脳が『もっと女性ホルモンを分泌して! 』と過度に指令を発するため、自律神経が乱れてしまうことがあります」 “ホルモンのせい”だから、大きな波には、身を任せるしかない? 「そんなことはありません。生活習慣を整えることで、大きな波を穏やかにできます。最初に、ホルモンは血流に乗って運ばれるとご説明しましたが、血行がよい状態を維持するにはウォーキングや軽い筋トレなど、適度な運動が必須。指令を出す脳を休めるためにも睡眠時間は確保したいですし、体をつくる食事ももちろん大切です」 近年は若い世代でもストレスなどからエストロゲンの分泌量が一時的に減り、ほてりや多汗など更年期のような症状に悩まされる人が増えていると聞くが……。 「思い当たる人は、生活習慣を見直すとともに、婦人科を受診しましょう。血液検査で女性ホルモンの検査を行えますし、漢方薬、低用量ピル、ホルモン補充療法などの選択肢もあります。婦人科系の心配や症状は、決して軽視しないでほしいです」
もう振り回されない! ゆらぎを制するセルフケアは?
体のことをきちんと知れば、対処法は自ずと見えてくるから。女性ホルモンの分泌によって起こる毎月の体調の波を最小限に抑えて日々を快適に過ごすために、自分自身で今日からでもできることを知っておきましょう。 Q:エストロゲンを増やす方法はあるの? A:大豆製品を食べる&運動する エストロゲンを食事や運動である程度補うことはできます。大豆に含まれるイソフラボンが体内でエストロゲンに似た働きをするので、納豆、豆腐、豆乳、味噌などを毎日の食事で適量摂取するといいでしょう。また、運動をすると男性ホルモン(テストステロン)や成長ホルモンが分泌され、一部は体内で代謝されてエストロゲンに変換されます。ペットボトルを持って腕の上げ下げをするだけでもいいので、筋トレを日課にしましょう。 Q:PMS対策に良い食材は? A:セロトニンやGABA不足を補う食材 PMSの一因として、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの不足や、ストレスの緩和や睡眠の質に関係する神経伝達物質GABAの不足が考えられます。セロトニンには、その材料となるトリプトファンを含む、バナナ、鶏肉、牛や豚の赤身肉、赤身魚、大豆製品を。GABAを補う食品にはトマトやかぼちゃ、発芽玄米などがあります。いずれも適量を日々の食事に取り入れるようにすることが大切で、食事が偏らないように気をつけましょう。 Q:生理周期の長い人と短い人は何が違う? A:ホルモンの放出テンポが違います 脳の指令によって放出された卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンが一定量を超えると、排卵が起こります。ホルモンの放出テンポは人によって違うので、ホルモンが溜まるまでの長さに個人差が生じます。日本人はテンポが遅めで、生理周期は23歳で平均30.7日だそうです。生理周期は25~38日が正常範囲とされ、毎回一定ではなくても、変動が6日以内であれば問題ありません。 Q:PMSはなぜ起きるの? A:体が妊娠に備えるから 排卵後に分泌量が増えるプロゲステロンには、妊娠に備えてエネルギーを蓄えるために食欲を増進させる、体内の水分を保持するといった働きがあります。つまり、これらの働きがPMSでよくあるむくみや頭痛を引き起こしているのです。PMSがあるのは排卵があり、妊娠できる状態だと言い換えることもできます。反対に、今すぐの妊娠を希望していない場合には、低用量ピルなどで月経をコントロールすることがPMS対策にもなります。 □ 妊娠に備えて、水分を溜め込む ・むくみやすくなる ・乳房も水分を溜めるので、胸が張る ・頭に水分が溜まれば、頭痛に ・便中の水分が減少し、便秘に □ 妊娠に備えて、栄養を溜め込む ・食欲増進 ・体重が増加する