遺品整理人 小島美羽氏インタビュー「孤独死・ゴミ屋敷化は他人事ではない」
高校卒業後に郵便局員として勤めていたが、父親が孤独死寸前の状態で見つかり、病院で亡くなったことをきっかけに、ゴミ屋敷や孤独死の現場といった特殊清掃の仕事に転職し、今年で10年となる小島美羽さん。数多くの現場を見てきて分かったことや感じたこと、ミニチュアを作る理由、死後の発見の遅れやゴミの山積を防ぐ方法などを聞いた。 (『中央公論』2024年12月号より)
「孤独死」の広がりと早期発見
――小島さんはこれまで特殊清掃や遺品整理の現場に3000件以上携わっています。孤独死で亡くなる人たちに多い特徴は何でしょうか。 私たちが引き受けている物件で言うと、年齢は50~60代がかなり多く、その後に年配の70~80代の方たちが続きます。特に孤独死で発見される方は、当たり前かもしれませんが一人暮らしの割合がとても大きいです。だからといって独身かといえば、そうとは限りません。結婚もしていて、お子さんもいる方が割と多い。お子さんが巣立って他の場所に行ったり、家族を作って別のところに住んでいたりするという状態の家庭で、さらに、旦那さんか奥さんのどちらかが先に亡くなり、一人でその家に住んでいるケースですね。 孤独死は複数人が一緒に暮らしているケースであっても全くないわけではありません。二世帯住宅などでも年に1~2件くらいは担当しています。二世帯住宅でも玄関やキッチンなどが完全に別々で、お互いの家を行き来しないような分離型の家によく見られます。この場合発見も遅れて、2週間、長いと1ヵ月間発見されなかった人もいました。隣に住んでいるから大丈夫だろうという安心感もあるようで、においがし始めて気が付くみたいな感じで。 孤独死で亡くなってから発見にいたるまでの期間は、ここ2年ぐらいでだんだん短くなっています。最近は1日から2週間ほどで発見されるケースが多く、長くてもせいぜい3ヵ月。私が会社に入ったばかりの2014年頃は、たとえば2年とか、間が空いた状態で発見されることが多かったんです。 ――発見にいたるまで短期間になっているのは、どういった理由が考えられますか。 私が入社した時は、自分も周りもまだ「孤独死」や「遺品整理」などの存在や言葉、それらを扱う業界をよく知らないし、意識していなかったと思うんです。でも、テレビで孤独死や自宅死などがニュースとして流れることが増え、初めて知った人がたくさんいます。自分も他人事ではないということで、皆さん遠くに住んでいる両親や大切な人にアクションを起こすようになりました。月に1回、あるいは週に1回、必ず家に行ったり、連絡したり、意識することによって、発見が早くなったのだと思います。 ――ほかに考えられる理由は。 私が制作している、孤独死やゴミ屋敷の部屋を再現したミニチュアの存在もあるかもしれません。女性が特殊清掃業界にいること自体、あまりないことで珍しい。だから注目された面もあるかもしれないです。 海外メディアの取材を受けた時に、目を付けてもらえた理由を聞いてみたら、「ただミニチュアを作るのではなくて、部屋の模型一つひとつに伝えたい意味が込められているところだ」と話していました。そこは私がこだわる点でもあり、ただ話題づくりのために制作しているわけではありません。自分が伝えたいことをミニチュアにして表現して、それをみんなに見てもらい、そこに暮らす人の生活を想像してもらうために作っています。 (中略)