遺品整理人 小島美羽氏インタビュー「孤独死・ゴミ屋敷化は他人事ではない」
お金の有無と忙しさによる影響
――誰が孤独死の遺体を発見することが多いでしょうか。 やはり遺族でしょうか。遺族が遠くに住んでいると、大家さんが異変に気付いて管理会社に連絡して見つかる例はありますね。ほかには近所の住人が、においやハエが部屋の中に入ってくるというクレームを管理会社に寄せ、警察が入って発見するケースも多いです。 ――ミニチュアの中に、高級マンションの一室での孤独死を表現したものがありました。一方で、餓死で亡くなった人の部屋のミニチュアもあります。孤独死やゴミ屋敷について、経済事情という視点からは何が言えそうですか。 つい最近の話なんですけれど、ある亡くなった人の家に行くと部屋がすごく荒れ果てているんです。掃除は多分一度もしていないレベルで、あらゆる所が汚く、服もあまり洗濯していない印象です。ところが通帳を見ると、残高が数千万円あったりする。 特にここ1年の間は同様のケースが多くて、お金を持っていたとしても関係ないのだとあらためて思ってしまいました。以前は、それなりにお金を持っている人は相応の暮らしをしていて、いい家だからこそ、においや虫が発生せず、周りに漏れないので発見が遅れるというパターンだったんですけれど、事情が変わってきている。 お金があるはずなのに必要以上に慎ましく暮らし、掃除機やエアコンが壊れたままの家もあるのです。不思議なのですが、背景には将来への不安があるのでは、と思います。いま老後資金に2000万円、あるいはそれ以上必要だと言われますよね。それを意識するあまり、お金を使えずにいるのかもしれません。 お金に困ってはいないのに、仕事が多忙のために家のことや自分のことが後回しになってしまう人も、部屋が散らかってしまいがちです。 以前、取材で現場に同行したジャーナリストがゴミ屋敷を見て、「私の家もこんな感じです」と言っていたのですが、予備軍は多分たくさんいると思います。私が依頼された中では、弁護士や水商売、看護師、芸能関係、土木関係の人たちがいて、接客業や激務であることが特徴でしょうか。客や患者、仕事仲間に神経を遣い、家へ帰る頃にはエネルギーを使い果たしてしまう。片付けたい気持ちはあると思うのですが、気力が残らないんですよね。私も、どちらかというと休みの日に一気に掃除するタイプなので分かります。 ストレスから来る鬱などの精神疾患も関わると思われ、ゴミ屋敷こそ本当に誰でも陥り得るものです。 (『中央公論』12月号ではこの後も、ゴミ屋敷の特徴、損害賠償をめぐるトラブル、孤独死を防ぐ方法について詳しく語っている。) 小島美羽(遺品整理クリーンサービス職員) 〔こじまみゆ〕 1992年埼玉県生まれ。2014年より現在の会社に所属し、遺品整理やゴミ屋敷の清掃、孤独死の現場の特殊清掃に従事する。孤独死の現場を再現したミニチュアを16年から独学で制作し始め、国内外のメディアやSNSで話題となる。著書に『時が止まった部屋』『遺品整理人がミニチュアで表現する孤独死の現場』。