なぜ藤浪晋太郎は2カ月で人気者になったのか──現地で聞いた「フジは知的な選手」の背景とは
移籍から2カ月でチームに認められた理由
メジャー1年目の今季、藤浪はアスレチックスの先発としてなかなか結果が出せなかった。ただ、防御率14.40の不振で中継ぎに転向すると、少しずつ好投するゲームが増えていく。 強豪のオリオールズに7月にトレードで移籍し、9月上旬から中旬には自己最長の7試合連続無失点。100マイル(約160キロ)を超える速球と切れ味鋭いスプリットを武器に、強打者をねじ伏せるシーンも見られるようになった。 今では本拠地のマウンドに登場する際、「フジ!フジ!フジ!」と大コールが沸き起こるなど、チームに必要な戦力として認識された感がある。 「私たちが期待していた通りの仕事をしてくれている。アスレチックス時代も体格に恵まれ、複数の球種と速球を備えた剛腕であることは見て取れた。先発から中継ぎに転向し、投球をよりシンプルにしたことも現時点での彼にとってはよかったのだろう。救援投手としての彼をより研ぎ澄ませていけば、ハイレベルなア・リーグ東地区でも成功できると考えたんだ」 藤浪獲得の陣頭指揮を取ったとされるオリオールズのマイク・エリアスGMもそう述べ、移籍後の働きには目を細めていた。
MLBに限らず、優れた結果さえ出せば、どんな経歴、人種、性別の人間でもすぐに“仲間”として迎え入れるのがアメリカの社会である。新天地で好投を続けたおかげで、“フジ”がいわゆる“one of us”として認められるのも早かったことは容易に想像できる。 ただ、もちろんそれだけではあるまい。藤浪がここまで好かれるようになったのは、冒頭のカノのエピソードに代表されるように、明るい人柄が魅力なのだ。 「僕が英語を教え、彼は日本語を教えてくれる。大抵はスラングだ。僕がどんな言葉を教わったか?『お金ちょうだい』だ(笑)。あとは『がんばって』。それからすごい球を投げたときに『エグい』。そうやってフジと日本語と英語で馬鹿げたことを言い合っているんだよ」 ツインズ時代には前田健太投手とも親しかったというクーロムはそう説明し、藤浪から教わったといういくつかの日本語を矢継ぎ早に披露してくれた。また、藤浪のことを「ジョークが大好きな男だ」と形容するウェブも、「ボールに日本語で文字を書き、的に向かって投げるという遊びをブルペンで一緒にやったことがある。みんな楽しんでいたよ」と明かしてくれた。