「今WBA王者に勝てるかと言えば50%。ただ将来世界王者になれる素材だ」世界戦中止の井岡一翔"後継者"に堤駿斗が8回TKO勝利で名乗り…敗れた元世界王者が語る可能性とは?
プロボクシングのWBA世界スーパーフェザー級王座への挑戦者決定戦が12月31日、大田区総合体育館で行われ、元OPBF東洋太平洋フェザー級王者で同級9位の堤駿斗(25、志成)が元WBA同級王者で同級14位のレネ・アルバラード(35、ニカラグア)に8回1分55秒TKO勝ちした。尊敬する元4階級制覇王者の井岡一翔(35、志成)の世界戦がWBA世界スーパーフライ級王者のフェルナンド・マルティネス(33、アルゼンチン)のインフル罹患で中止となったが、繰り上がりでメインを務めた堤が見事に代役を果たした。敗れた元世界王者は「世界王者になれる素質がある」と称賛した。 【映像】辰吉ジュニアの壮絶失神KO負けシーン
“井岡のいない大晦日”にニュースターが誕生した。アマ13冠で天才と呼ばれた堤がプロ6戦目にしてついに覚醒した。8ラウンド。「一番練習したパンチ。当たれば効く」という左フックで、ぐらつかせて猛ラッシュ。タフな元世界王者がバランスを保てなくなると、そこへ強烈な右で追い打ちをかけて、さらにハリケーンのようなパンチを浴びせると、レフェリーが間に割って入り試合をストップした。 「判定続きのこの興行を倒して終えたかった。ここだ!という気持ちがあった。 合格点をあげていいかな、もっとできる悔しさはあるけど終わりよければすべてよし」 堤はリング上で吠えた。 ダウンはせず、せめてもの誇りを守ったアルバラードは「彼のパンチはとても的確だった。パンチ量も多く、レフェリーストップには納得だ」と完敗を認めた。 序盤から堤が主導権を握った。ジャブの差し合いを制して、コンビネーションに常に左右のボディを絡めてアルバラードを消耗させた。 35歳のニカラグア人は、スピードもパンチ力もなかった。しかし、佐々木修平トレーナーと、父の直樹さんは「それが厄介だった」と振り返る。 「あのスピードに合わせてボクシングをしてしまうと、ペースを奪われるんです。しかもタフ。それがアルバラードが世界王者になった理由なんです。見切ってアジャストできるまで、4ラウンドはかかりましたが、対応能力は見せてくれました」 5ラウンドに見せ場を作る、 左フックをめりこませ、ロープに詰めてラッシュを仕掛けた。だが、堤は、無理をせず、強引にフィニッシュにもっていかなかった。 頭をよぎったのは、尊敬する井岡のアドバイスである。 「後半にもたつき、判定ドローになってしまうことが頭をよぎったんです。井岡さんにも『欲を出すと良さが消える。削って削ってが、駿斗のボクシング。削って流れを作ると、おのずとチャンスが来るから』とアドバイスをもらいました。9、10(ラウンド)は相手が頑張るけれど、その前の7、8、9(ラウンド)に決め切ると思ったんです。だからあえてブレーキをかけました」 冷静沈着な判断。 「冷静な奴が一番強い。プロになってから思い知らされたんです」 キャリア豊富なアルバラードが一発のボディで沈むことはないと考えて、「下を意識させる」的確なボディブローを多彩に打ち分けた。相手の左のパンチに対して脇の下をくぐらせるようにして打ち込んだ右のボディストレートも有効だった。 右ストレートに、アッパーなどを駆使して、計算ずくで8ラウンドのTKOフィニッシュをお膳立てしたのである。
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