【競輪コラム】激しさを増す“初手争い” どう攻める、どう守る 選手の対応力に注目
「初手でほぼ決まった」、「○○さんにスタートを取ってもらったのが大きかった」。今年、このような言葉を何度も聞いた。選手の脚力が向上し、誘導待避から突っ張って、押し切りが増加。脚力差があり、点数順で車番が決まるミッドナイトは、より初手が結果に直結する。それだけに初手の争いが激化。選手の策もかなりシビアになっている。 「カンナ削り」は、もはや当たり前。前走者に外入しながらバックを踏むことで、後続の選手は内抜きにならないように外を迂回(うかい)しなければならない。選手道に反するというものだったが、近況は「あれしかない」と割り切ってスタート争いから横行。初手が車番順にならなくなってきた。 また、後ろ攻めになってしまった時の対応策も増えた。誘導待避のタイミングで素直に斬りに行ったら突っ張られる。そのためタイミングを遅らせて一気に斬りに行ったり、カンナ削りでなるべく前々に攻めたり…。また、斬りに行くと見せかけて、空いた内に突っ込みイン粘りをしたり。何とか初手=結果にならないようにと対応策が増えた。 激しさを増すだけに選手が苦言を呈す場面も増えた。カンナ削りをされたスタートの速い選手は「あんなのあり得ない。こっちはスタートで飯食っているんだから」と怒り。また、一度隊列が決まったのに、別のラインを前に入れたりするシーンでは、「あれいいんですかね…。こっちがもっとシビアにいかないと駄目なんですかね」。これは選手間のモラルの部分で外野がとやかくは言えない。ただ、初手争いがかなりシビアになっている証拠と言える。 「選手も対応するんですよ。特にチャレンジは命懸けですから」とベテラン選手に言われた。“車番競輪”とも言われ、より激化する初手争い。車券の予想するためにも、ぜひ一層、注目してみてほしい。(渡辺 雄人)