非業の死を遂げた天文学者・シュバルツシルト。アインシュタインも称賛し、その理解をも超えた彼の見つけた「解」とは
アインシュタインも現実に存在するとは思わなかった
ロシア戦線に滞在中、厳密解を発見したシュバルツシルトは、アインシュタインにその発見を知らせる手紙を送りました。 アインシュタイン自身が、彼のアインシュタイン方程式を何の近似も用いずに厳密に解くことは不可能だろうと思っていたので、シュバルツシルトの発見を称賛しました。 しかし、シュバルツシルト解には密度が非常に高い領域が含まれるため、現実的な物質では起こらない、つまり、シュバルツシルト解が表現するものは、実際の天体として宇宙に存在するはずがないとアインシュタインは考えてしまいました。 こうして、一般相対性理論の生みの親でさえ非現実的だと考えたシュバルツシルト解を、当時の天文学者が顧みることはありませんでした。 この「シュバルツシルト解」は後にヨハネス・ドロステという理論物理学者によって正しく理解されていくことになります。次の記事では、「凍りついた天体」というキーワードをもとに、その解の持つ意味、重力そしてブラックホールのおもしろい特徴について紹介していくことにします。
浅田 秀樹(弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授)
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