なぜオリックスは土壇場で踏みとどまったのか…中嶋監督の“ドタバタ采配”を救った“年俸4億円の代打”ジョーンズの一打
オリックスペースだったが、8回のマウンドに送り出した勝利方程式のセットアッパー、ヒギンスが誤算だった。ストライクが入らない。先頭の塩見、そして青木に連続四球である。 それでも中嶋監督はベンチで腕組みをしたまま動かない。 打席は、ここまで17打数2安打で“逆シリーズ男”になりかけていた山田である。ヒギンスはボールが先行した。3-1となった。カウントを取れるボールはチェンアップしか残っていなかった。山田は、それを読んでいた。フルスイングした打球がレフトスタンド上段へ。レフトの吉田正は一歩も動くことができないまま打球を見送った。眠れるリーダーの起死回生の同点3ランに東京ドームは沸きに沸いた。 「短期決戦では早い決断が必要になる。山岡が使えるのであれば、先頭を四球で出したところで交代。一手遅れたとしても山田のところでヒギンスは下ろすべきだった。結果論ではなくベンチの継投ミスだろう。ヒギンスはこのシリーズではもう使えなくなった。ただ山田の3ランが同点止まりだったことに意味があった。結果的に8回の追加点が効いたのだ」 池田氏は厳しい指摘をした。 さらに無死から本塁打、三塁打と勢いに乗る村上を迎えたところで、まだヒギンスを続投させた。特大のセンターフライに抑えたところで右ヒジ手術から復活した山岡をシリーズ初登板させた。山岡の制球は不安定だったが、ストレートは最速148キロをマーク、武器であるスライダー、カットはキレていた。 山岡の復活劇がジョーンズの劇的代打アーチにつながっていくのである。 後がない状況から2勝3敗に戻した。ギリギリの戦いを制して“神戸決戦”に持ち込むことに成功した中嶋監督は「(神戸で胴上げすると)言った手前(神戸に)帰れてよかったです」 」と本音を漏らし、第6戦の先発を“公開予告”した。 「追い込まれている状況は変わりませんが、最後まであきらめないで頑張ります。熱が上がらなかったら山本由伸で(対戦成績を)タイに持っていきたいと思います」 熱が上がらなかったらーの言葉の意味は不明だが、おそらくコンディションに問題がなければという意味なのだろう。第1戦では6回1失点にまとめながらも勝利投手になれなかった沢村賞投手を第6戦に立てる。そこで3勝3敗のタイにして、第7戦は左腕の宮城。宮城もまた第2戦を8回途中まで1失点に抑えながらも敗戦投手となった。 池田氏は、「オリックスの有利な条件が揃う。神戸で展開が一気に変わる可能性が出てきた」と、今後の展開を予想した。 「ほっともっとの寒さがどう影響するかという不安材料はあるが、勝ち投手になれなかった山本は気合が入ると思う。第7戦に先発予定の宮城も同じ。2枚看板を繰り出すオリックスに対し、ヤクルトは奥川の登板間隔を空けなればならないので奥川、高橋の順番で使えないという不安がある。オリックスは打線がようやく動きだしたし、連投は無理にしろ、山岡というカードを中継ぎで1枚使えるメドも立った。DHに戻り腰を落ち着けた戦いもできる。有利なのはオリックス。データ的には不利な逆転日本一の可能性が出てきたと思う。いずれにしろ接戦にはなる。四球、ミスを犯した方が後手を踏むだろう」 過去に1勝3敗から2勝3敗にしたケースは17度あり、逆転日本一をつかんだのは4度だけ。今なお、厳しいデータを突きつけられているが、オリックスには切り札が2枚残っている。コンサートの関係で京セラドーム大阪が使えなくなったが、ほっともっとフィールド神戸は、1996年に仰木監督が宙に舞った思い出の場所。 ジョーンズがナインの気持ちを代弁した。 「このチームは最後のアウトまで、決してあきらめない。神戸では山本が行く。チャンスがある」 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)