なぜオリックスは土壇場で踏みとどまったのか…中嶋監督の“ドタバタ采配”を救った“年俸4億円の代打”ジョーンズの一打
現役時代に阪神、ダイエー、ヤクルトでプレーしパ・リーグの野球に詳しい評論家の池田親興氏は、「オリックスベンチの采配はバタバタしていた。だが、1点差で食らいつき打線が活性化したことが大きかったと思う。ここまでは、なんでもかんでも振っているという印象が強かったが、この日は、ふた周り目から狙い球を絞り始め、ヤクルト投手陣の失投を見逃さなかった。選手の力を感じた」と評論した。 死闘は、3勝1敗で王手をかけたヤクルトの2回の先制点から始まった。先頭のサンタナがオリックスの先発左腕である山崎福から四球を選び出塁すると、続く中村のレフト前ヒットで迷わず三塁へ進む好走塁。無死一、三塁とするとオスナの三塁ゴロ併殺打の間に先制のホームを踏む。オリックスのベンチは焦った。 4回先頭の福田がライト前ヒットで出塁すると、続く宗の初球にエンドランを仕掛けたのだ。だが、宗が外角のストレートに空振り、スタートを切っていた福田が二塁でアウトになった。 「宗もバットに当てなければならなかったボールだったが、4試合連続ヒット中で調子は悪くない打者なのだから、どっしりと構えて打たせていい場面だった。原樹理にテンポよくやられていた打線に業を煮やした中嶋監督がなんとかしたいという焦りが出た采配だった」 池田氏が指摘したベンチの采配ミスを帳消しにしたのが、吉田正ー杉本の首位打者―本塁打王コンビである。二死走者無しから吉田正がライト線を破る二塁打で出塁すると、杉本がフルカウントからスライダーに食らいつき同点タイムリーをセンターへ弾き返したのだ。 だが、その裏ヤクルトも4番の一打ですぐさま勝ち越す。先頭の村上が左中間にシリーズ2号。流れを取り戻したかに見えたが、勝利の女神は、ミスや四球を出した側へは冷酷だ。6回二死から原が吉田正をボテボテの一塁ゴロに打ち取ったのだが、オスナがベースカバーに入った原へ連携ミス。内角球に苦しめられていた杉本が三遊間を破ってチャンスを広げた。ここで高津監督が動く。対左腕に打率.203と弱いT―岡田を迎えたところで左腕の田口にスイッチした。だが、3球目の逆球になったツーシームをT―岡田が振り切った。ライト前へ抜ける同点タイムリー。再び追いついたのだ。 その裏二死一、三塁のピンチを山崎福から吉田凌の継投で防いだオリックスは7回についにリードを奪う。3連投となるヤクルトの3番手、石山から紅林がヒットで出ると、続く伏見は送りバント。猛チャージしてきた三塁手村上は、二塁へ送球すればアウトのタイミングでゴロを処理したが、安全策を取り得点圏へ走者が進む。ここで、中嶋監督が安達に代えてシリーズ初スタメンに起用した天理高卒3年目の太田が期待に応えた ライナー性の打球が右中間を抜けていく。タイムリー三塁打。 中嶋監督は、「若い2人で点をとってくれました。チームに勢いをつけてくれた。勇気を与えてくれた気がします」と、紅林と太田のヤングコンビを称えた。 さらに続くチャンスに代打モヤ。内角球に詰まりながらスライディングしてきたサンタナのグラブが届かなかった。「左打者ということもありサンタナの守備位置が若干深かったことが幸いした。石山も3連投で疲れからか制球が甘かった」と池田氏。貴重な2点目をスコアボードに刻む。オリックスはさらに8回にも二死から紅林が出塁、伏見の左中間を深々と破るタイムリー二塁打で追加点を奪い、5-2とヤクルトを突き放した。