北斎の冨嶽三十六景 「駿州片倉茶園ノ不二」はどこを描いた?
富士市で北斎サミットが開かれる理由
長年、この絵に魅せられてきた木内さんは現在、地域の仲間とともに「富士市に残る北斎の足跡を辿る会」を立ち上げて北斎と地域のかかわりを探求しつつ、片倉を広くアピールしようと取り組んでいる。北斎をめぐっては、2014年にパリのグラン・パレ・ナショナル・ギャラリーで開催された「葛飾北斎展」で入場者数が35万人を突破するなどヨーロッパを中心に世界的な人気の広がりをみせており、その熱気が日本にも押し寄せ、木内さんたちの活動の追い風になっている。 富士市では全国初となる「北斎サミット」を今秋、市内で開催しようと準備を進めている。このイベントは『知られざる北斎』(幻冬舎)の著者で、ノンフィクション作家の神山典士氏が委員長を務める北斎サミットジャパン委員会の活動に富士市が賛同して具体化した。市内で活動する木内さんたちの取り組みによって、市も冨嶽三十六景の文化的な資産に着目するようになり、全国初の北斎サミットの実現に向けて動き始めた。「北斎を通じて地域を見直し、若い人たちが地域を考え、誇りをもってくれるようになったら嬉しい」と木内さん。北斎と地域の新しい関係が始まろうとしている。 (フリーライター 三好達也)