廃棄果物が缶酎ハイに 味わい再現、産地も大盛況 注目の「CSV(共通価値創造)」 近ごろ都に流行るもの
ふぞろい、傷があるなどの理由で廃棄される果物を、缶酎ハイの原料にしてフードロス削減に貢献する、キリンビール「氷結mottainai(もったいない)」プロジェクトの商品群が共感消費されている。5月発売の横浜市産「浜なし」に続く、第2弾の高知県産「ぽんかん」は10月22日の発売初日に目標の18万ケース(1ケースは350ミリリットル缶24本換算)出荷を達成し、12月中旬には完売する勢いだ。企業が本業で社会貢献と収益や競争力アップを同時に目指すCSV(共通価値創造)活動としても注目したい。 ■「飲むだけで社会貢献」若者に響く 缶酎ハイ市場は過去10年で約2倍に成長。氷結は昨年過去最高の3430万ケースを販売したトップブランドだ。このスケール感あってこそ、問題解決やメッセージを伝える影響力が見込める。 第1弾の浜なしは、目標の1・5倍にあたる27万ケースを販売することによって、約3万4千個の捨てられるはずだった梨を救い、苗木購入などの支援金としてJA横浜に約600万円が贈られた。「JAでも3年前からお菓子やジュースへの活用、農家も独自に焼肉のタレやジャムなどを作って廃棄を減らす努力はしてきたが、高が知れている。傷ついた梨をどうやってさばいたらいいのか? 悩んでいた所にキリンさんから声がかかって、えぇ!? 12トンもくださいって」。JA横浜営農部の渡辺正史さん(51)が振り返る。 渡りに船。「しかし、そんなに集められるのかと不安もよぎった」。生産農家は130軒。昨シーズンの7月下旬から9月にかけて、渡辺さんら農協職員が「捨てないで取っておいて。生かして収益になりますから」と一軒一軒回った。共感と期待から結果的に想定以上の19トンも回収できた。 浜なしの品種は幸水や豊水。JA横浜から一定の基準を満たした農家が認定され、完熟した状態で直販している。一般市場には出さない〝幻の梨〟の側面もある。「スーパーでは入手できない完熟の奥深い甘さが特徴。そこが氷結にも生かされていて、飲んでびっくりしました」と渡辺さん。 味わいの再現性の高さについて氷結のプロジェクト担当、山岡加菜さん(32)は、「農家さんのもとを訪ね、原料となる果実をいただきながら、ここが味のポイント、これがらしさだと体感した上で商品開発をする。そのようなプロセスを踏んでいます」。