廃棄果物が缶酎ハイに 味わい再現、産地も大盛況 注目の「CSV(共通価値創造)」 近ごろ都に流行るもの
現在販売中のぽんかんも、南国土佐の風を感じさせるフレッシュな香りが印象的だ。プロジェクトは令和9年まで、年間150トンのフードロス削減を目標に継続的に実施される。
「廃棄されてしまって転用先のない果実を消費できないか。お付き合いのある供給元や農協に幅広く声をかけて探索しています」と、キリン調達部原料グループの野口啓太さん(32)。社内では「果汁ハンター」とも呼ばれる。今後、どこの地方のどんな果実が見いだされるのか、お楽しみは続いてゆく。
「プロジェクトをきっかけに規格外の果実を保管、回収する仕組みが出来上がり、色々なオファーが来ています」とJA横浜の渡辺さん。複数の企業と連携して、廃棄される浜なしの新活用に向けた挑戦が始まっている。また、今シーズンは農家や直売所に新規客が押し寄せる大盛況。果実そのものを食べてみたいとの需要が掘り起こされ、全国的な知名度が高まったと地元も喜んでいる。
氷結側の大きな利益は、プロジェクトの狙い通り若者ユーザーを増やせたこと。既存のメインユーザーは30~50代だが、「飲むだけで社会貢献できる」点がSDGs(持続可能な開発目標)に敏感な20代にも響いた。350ミリリットル缶の実勢価格は179円で、1缶あたり1円が農家支援の寄付となる。今年度の消費者庁・環境省「食品ロス削減推進表彰」審査委員長賞も酒類業界で初めて受賞した。
安く酔える!? 缶酎ハイのイメージも一新。自然派の爽やかな印象を、適量飲酒で守りたいものだ。(重松明子)