妻の妊娠中に、欲求不満から不貞を働く夫もいるが…妊娠中の「母親のストレス」が子どもに与える「危険性」
日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。人生には、さまざまな困難が待ち受けています。 【写真】じつはこんなに高い…「うつ」になる「65歳以上の高齢者」の「衝撃の割合」 『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)では、各ライフステージに潜む悩みを年代ごとに解説しています。ふつうは時系列に沿って、生まれたときからスタートしますが、本書では逆に高齢者の側からたどっています。 本記事では、せっかくの人生を気分よく過ごすためにはどうすればよいのか、『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)の内容を抜粋、編集して紹介します。
胎教は有効か
胎教は妊娠中の女性が、お腹の中の赤ちゃんによい影響があると思われることを行うことで、モーツァルトの音楽を聴くとか、美術館に行って名画を鑑賞するなどがオーソドックスなものです。 妊娠十八週から二十五週ごろには胎児は外部の音を認識するようになり、特に母親の声は骨伝導を通じてよく聞こえるといわれます。ですから、安定期に入ったら、妊婦さんは胎児に話しかけるといいでしょう。まちがっても赤ちゃんを否定したり、妊娠を後悔するようなことは言ってはいけません。 母親がリラックスするための胎教もあります。ヨガや瞑想、リラクゼーションなどで、癒やしを感じると胎児の成育にもよい効果があるといわれます。 胎教によって、赤ちゃんの知能が発達したり、特殊な才能が備わったりするかどうかは、科学的に証明されていませんし、論理的にも無理があります。少しでも優秀な子どもがほしいという気持ちもわかりますが、胎教に期待しすぎると、子どもが生まれる前から教育ママ・パパの予備軍になってしまい、生まれてくる子どもがかわいそうです。 よい影響は証明されていませんが、妊娠中の母親のストレスが、子どもに知的障害を引き起こす危険性については、科学的な報告もあります。たとえば妊娠中に離婚したり、身内が重い病気になったり、家業が倒産したり、夫や自分がリストラに遭ったり、家が火事で焼失したりすると、生まれてくる子どもに知的障害が発生するリスクが高まるといいます。 妻の妊娠中に、欲求不満から不貞を働く夫もいるようですが、かわいい我が子を危険にさらす行為であることも承知の上でするべきでしょう。 さらに連載記事<じつは「65歳以上高齢者」の「6~7人に一人」が「うつ」になっているという「衝撃的な事実」>では、高齢者がうつになりやすい理由と、その症状について詳しく解説しています。
久坂部 羊(医師・作家)