半導体製造の人材育成に2億5,000万ドル 米国の熟練労働者育成の取り組み最前線
AIスマホやAIパソコン需要の高まり、半導体不足がさらに悪化する可能性
新たな半導体不足の懸念が浮上している。生成AI需要の急増に伴うGPU(画像処理装置)の供給不足に加え、AI機能搭載のスマートフォンやノートPCの需要増加により、次の半導体不足が引き起こされる可能性が高まっているのだ。 コンサルティング大手ベイン・アンド・カンパニーは、複雑な半導体サプライチェーンにおいて、需要が約20%以上増加すると供給と需要のバランスが崩れ、半導体不足に陥る可能性が高いと警鐘を鳴らす。AIブームによる需要増加は、この閾値を容易に超える可能性があるという。 現在、大手テクノロジー企業は、OpenAIのGPT4o(ChatGPT)のような大規模言語モデル(LLM)のトレーニングに不可欠なGPUの確保に奔走している。その主な供給元は、データセンター向けGPUで圧倒的なシェアを持つNVIDIAだ。一方、クアルコムをはじめとする企業は、クラウドを介さずにローカル環境でAIアプリケーションを実行できるスマートフォンやPC向けのチップ開発に注力。すでにサムスンやマイクロソフトがこうしたAI対応デバイスを市場に投入し始めている。
半導体サプライチェーンの複雑さも、供給不足のリスクを高める要因となっている。たとえば、NVIDIAの場合、GPUの設計は同社が行うが、実際の製造は台湾のTSMCが担当している。一方、TSMCは世界各国から半導体製造装置を調達しており、オランダなどからの供給に依存している。最先端チップの大量生産が可能な企業は、TSMCとサムスン電子に限られているのが現状だ。 さらに地政学的なリスクも無視できない。半導体は各国が戦略的技術と位置付けており、米国は、輸出規制などを通じて中国の最先端チップへのアクセスを制限している。今後さらに米国の対中輸出規制が厳格化されたり、グローバル企業が中国からの調達を減らす動きにより、半導体の供給体制が一層不安定化する可能性もあるとされる。工場建設の遅延や材料不足なども、供給のボトルネックとなる可能性をベインは指摘している。