半導体製造の人材育成に2億5,000万ドル 米国の熟練労働者育成の取り組み最前線
米国で加速する半導体製造投資、高まるアリゾナ州の存在感
半導体産業における地政学的リスクへの対応として、米国は国内の半導体生産能力の強化を進めている。その中核となるのが、アリゾナ州フェニックス周辺地区だ。同地域では2020年以降、半導体関連の製造プロジェクトが40件以上発表され、総額1,020億ドルの投資と1万5,700人以上の直接雇用が創出された。 アリゾナの半導体産業は、1949年にモトローラが研究所を開設したことに始まる。その後、1976年にはオランダの半導体製造機器メーカーASM、1980年にはインテルがチャンドラーに工場を開設し、州内の主要雇用主の一つとなった。さらに2020年5月、TSMCが650億ドルを投じて3つの工場を建設する計画を発表。同州史上最大の海外直接投資となる。 アリゾナ州が半導体製造の拠点として選ばれる背景には、複数の要因がある。ManufaturingDriveが伝えたTSMCの広報担当者の話によると、州政府や市当局、経済開発機関、公共事業者、高等教育機関など、関係者の準備と理解度の高さが決め手になった。その中でもアリゾナ州立大学(ASU)の工学部の成長は、若い人材確保という点で投資決定に大きな影響を及ぼしたという。 こうした大手企業の進出に伴い、サプライチェーンを構成する関連企業の集積も進んでいる。グレーター・フェニックス経済評議会(GPEC)のクリス・カマチョ会長兼CEOによると、同評議会は39の半導体関連企業を誘致し、7,700人以上の雇用と370億ドル以上の資本投資を創出した。直近の投資事例の1つとして、半導体製造装置メーカーのベンチマーク・エレクトロニクスによるアリゾナ州メサにおける新工場開設が挙げられる。同社は、多くの顧客企業に近接するメリット、またCHIPS法による優遇措置と充実した技術人材プールが大きな魅力になったと指摘している。 このほか安定した気候、低い公共料金、ビジネスフレンドリーな環境も、アリゾナ州の魅力となっており、半導体を含め製造業全体が活況の様相を呈している。2020年以降、フェニックス都市圏では14件の大型製造プロジェクトが発表され、製造関連の建設工事数ではアトランタやオースティンなどを抑えて全米首位を記録した。