なぜ久保建英はタブーを破ってW杯アジア2次予選モンゴル戦での史上最年少ゴールを予告したのか?
ちょっぴり笑顔を浮かべながら、あえて禁を破った。戦いを前にして具体的な数字や目標をあげることを「あまり好きじゃない」と封印してきたMF久保建英(RCDマジョルカ)が一転して、日本代表の史上最年少記録を42年ぶりに更新するゴールを決めると宣言した。 ターゲットはモンゴル代表を埼玉スタジアムに迎える、10日のカタールワールドカップ・アジア2次予選だ。冒頭15分間を除いて非公開で行われた、8日の練習後のメディア対応でゴールやアシストを期待された久保は、胸を張って「期待してもらって大丈夫です」と答えた。 代表初ゴールをめぐるやり取りには、実は伏線があった。2-0で勝利した先月10日のミャンマー代表とのアジア2次予選初戦は、敵地ヤンゴンでの開催だった。ホーム初戦となるモンゴル戦へ向けて、久保はスタジアムに駆けつけるファン・サポーターへこんな言葉を残している。 「お金を払って観にきてくれるお客さんを楽しませるのが、自分たちの役割だと思うので。お客さんがしっかりと満足できるような試合ができれば、と思っています」 攻撃的な選手がスタンドを沸かせるにはゴールか、あるいはゴールを導くアシストを決めた瞬間となる。そこで「期待してもらって――」という言葉を口にした久保は、さらに「ということは、歴代最年少ゴールを決めることになりますが」とたたみ掛けられた直後に、こんな言葉を紡いだ。 「何だか誘導尋問みたいになっちゃっていますけど。そうですね、いつまでも(歴代最年少ゴールと)言われ続けるのもあれなので、早いうちに決められれば(言われるのも)終わりになりますからね」
6月9日のエルサルバドル代表とのキリンチャレンジカップで、歴代で2番目に若い18歳と5日でフル代表デビューを果たしてから約4ヵ月。ピッチに立つたびに歴代最年少ゴールの更新を期待されてきた久保は、出場すれば7試合目となるモンゴル戦を18歳128日で迎える。 現時点の最年少ゴール記録は、攻撃的MFとして活躍した金田喜稔がもつ19歳119日。中央大学2年生だった1977年6月15日に、敵地ソウルで行われた韓国代表との日韓定期戦で代表デビューを先発フル出場で飾り、0-2で迎えた後半11分に一矢を報いるゴールを決めた。 2001年6月4日に生まれた久保は、日本がアジア2次予選を突破した先の来年9月8日に予定されている、アジア3次予選の第2戦までにゴールを決めれば金田の記録を更新する。しかし、将来の目標を「ひと言で表現すれば『すごい選手』になること」と描いているだけに、記録更新を通過点とするためにも、できるだけ早く呪縛から解き放たれたいのだろう。 初めてフル代表に招集された6月のキリンチャレンジカップへは、FC東京の所属で臨んだ。直後に世界一のビッグクラブ、レアル・マドリードへ電撃移籍してブラジルで開催されたコパ・アメリカを戦い、9月シリーズへ招集される直前にマジョルカへ期限付き移籍した。 日本との時差を手土産にしながら、スペインから長距離を移動して森保ジャパンへ合流するのは2度目となる。いままでに経験したことのない感覚が、胸中で芽生えていると久保は打ち明ける。 「何か大雑把な言い方であれですけど、これが日本代表なのかな、という感じですね。環境を変えるのもひとつのリラックスになっている。代表は代表、チームはチームと割り切ってプレーするのも、非常にいいことなのかなと思っています」 モンゴル戦へ向けて森保ジャパンが始動した7日に、全体練習後に駆けつけた。午後3時半すぎに羽田空港に到着し、急げば同5時にスタートする予定の練習に間に合うと判断。移動だけの予定を自分の意思で変更し、軽めのランニングで汗を流した理由をこう説明する。 「着いた日に運動した方が、時差ぼけにもいいと聞いたので。自分は休むと体がなまっちゃうので、その意味でも早く合流できてよかった。一日早く帰ってきたことがアドバンテージになるとは思っていませんけど、準備するのは自分たちにとっての義務だと思うので。そこはいつ帰国しようが、たとえば飛行機が明日の到着だったとしても、代表戦までに仕上げるのが代表選手としての最低限の守るべきものなのかな、と」