丸ごとそのままの姿で保存 琥珀に閉じ込められた恐竜時代のヒナ鳥発見
爪の形態は太古の鳥の生態を探る上で重要とされる。大きさや曲がり具合などから、今回の研究では「木の枝につかまるのに適した種」というアイデアを提示している。おそらく森林のような環境で生息していたのだろう。この点は、琥珀や昆虫化石が大量に見つかる事実からも推測できるだろう。(具体的にどのような木の種類がたくさんの樹液を分泌するのか、個人的に気になるところだ。) これだけの優れた体表面の保存状態を見せつけられると、ヒナの体の内部はどの程度残っているのかも非常に気になる。もしかすると筋肉や脳、心臓などの臓器の構造も、保存されているのではないだろうか? 今回の研究論文においてはここまで踏み入ったデータは述べられていない。(注:いずれさらなる研究成果が報告されるかもしれない。) 研究チームはこのヒナ鳥「ベローン」が死んだ原因についても考察を行なっている。体の後ろ半分が残っていないのはどういうわけか? 捕食者に噛みちぎられた形跡は見つからないそうだ。おそらく失われた体の部分は、うまいこと樹液の中に浸ることができなかったのだろう。そのため化石化が進む過程で風化して失われたようだ。 樹液の中に誤って頭からダイブしたかわいそうなヒナ。そんなイメージが(私の頭の中に)湧いてくる。トラブルに見舞われたヒナを助けてあげられる、そんな良識ある方(=恐竜)など、白亜紀当時、誰もいなかったのかもしれない。(やれやれ、現在に生まれたヒナ鳥たちのなんと幸運なことか。) 今回の研究チームは、2014年より、ビルマの琥珀現場産の脊椎動物 ── 特に鳥や恐竜 ── の化石研究をはじめたそうだ。2015―2016年の間にいくつかの発見があったそうだ。先に述べた恐竜の羽毛と今回の鳥のヒナが、第一段階の研究の成果だという。これからいくつか、また目を見はるような琥珀に含まれた化石標本を、近々目にすることになりそうだ。
筆者ノート
今回紹介した化石標本は 雲南省にあるHupoge Amber Museumに属する。標本番号はHPG-15-1が与えられている。 今回使わせていただいた写真は全て、中国、カナダと北米の古生物学者からなる研究チームにコピーライトは属する(Lida Xing博士等)。中国の化石鳥類研究の専門家Jingmai O'Connor博士には、いくつかメールを通して貴重な情報も分けていただいた。この場を借りて深く感謝の意を述べたい。(謝々!)