丸ごとそのままの姿で保存 琥珀に閉じ込められた恐竜時代のヒナ鳥発見
ミャンマーの発掘現場 ── 「ビルマの琥珀(Burmese Amber)」
今回のヒナ鳥の化石も、前回の恐竜羽毛と同じくミャンマー最北部のカチン州にある同一の化石現場から発見された。この現場一帯は「ビルマの琥珀(Burmese Amber)」という呼称で知られている(注:ミャンマーは2010年頃までビルマと呼ばれていた。)。世界中見回しても、現在知られている限り最良の白亜紀の琥珀の産地だ。ちなみに化石記録における最古の琥珀は、デボン紀後期までさかのぼる。 さらに重要なことに、ここ「ビルマの琥珀」で見つかるモノの中には、さまざまな小動物がよく混じっていることが知られている。例えばコガネムシのような甲虫、さまざまな昆虫の幼虫、ムカデ・ヤスリなど多足類の仲間などが、実に見事に琥珀の中に丸ごと閉じ込められいる。(こうした標本を私は写真などで以前に何度か見かけた。)こうした小動物のほとんどは、体長2-3cmくらいの小ぶりなサイズのようだ。これより大きくなると樹液のかたまりから容易に抜け出すことが可能なのかもしれない。 「ビルマの琥珀」のような特別な化石産地に関する情報に、化石研究者は日頃からよく注意を払っているものだ。今回の研究チームは中国、カナダとアメリカの古鳥類学者からなる。当然、昆虫だけでなく、他の動物 ── 特に鳥類を含む小型の脊椎動物 ── も含まれていないかどうか。こうした好奇心や詮索が自然に湧いて来たことは想像できる。 さて写真で見る限りこの化石発掘現場は、かなり人里はなれた山中にあるようだ(写真 1& 2)。人口が密集していない場所では、化石現場を維持するのに適しているだろう(盗掘などのリスクも減る)。周囲はかなり木々に囲まれているようだ。基本的にこうした場所では、化石を含む地層がむき出しになっていることは少ないはずだ。
発掘現場は露出した岩肌にそって行われる、一般の化石採集とはかなり趣が違うようだ(写真3 )。まるで炭鉱のように地面を掘り下げている様子が分かる。白亜紀の地層において、たくさんの琥珀が見つかる場所は、世界中見回してもほとんどない。おそらくこの現場は、(私が推測するに)琥珀がメインの目的として採掘が行われているようだ。