米大統領選は高齢対決の再来か?体調不安のバイデン、刑事訴追のトランプ弱み抱える両氏 選挙まで1年、第3の候補やAIの脅威に注目【共同通信特派員座談会】
新冨 ケネディ氏の集会では、2020年大統領選でバイデン氏、トランプ氏に投票したとの声をそれぞれ耳にし、民主、共和両党の支持層が流れつつある実態が垣間見えた。集会の参加者は気候変動問題への取り組み強化や米軍の態勢縮小といったケネディ氏の公約に魅力を感じているという以上に、分断をあおる既存の二大政党にうんざりしているとの印象が強かった。 一方、白人の中高年層の姿が目立ち、非白人や若者も含めた多様な有権者が結集しているような状況ではなかった。投票行動の大きな変化につながるかは、今後の選挙戦次第ではないか。 ▽生成AIによる偽情報の拡散に注意必要 ―生成人工知能(AI)が登場してから初めての大統領選となるのも注目点だ。 井口雄一郎(科学担当) 生成AIの特徴の一つは、人間が書いたような自然な文章が容易に、大量に作成できるようになったことだ。メッセージは同じだが、少しずつ表現やターゲットとする読み手を変えたコンテンツをAIに大量に作らせてSNSに投稿する。そうすれば、みんなが異口同音の意見を述べ、「世論の流れ」が存在するように見えてしまう恐れがある。大量の偽情報で本物の情報を押し流してしまうこともできるかもしれない。
高度なAIが無料または低額で誰でも使えるようになった点も効いてくる可能性がある。ポジティブに利用するとすれば、自分が支持する候補のために訴求力のある文章や魅力的なスピーチを作り、米国内で使われる複数言語に翻訳して応援するようなことが考えられるが、この利点はそのまま悪用にもつながる。過去に米国に敵対する国がお金をかけて組織的にやったようなコンテンツの大量生成と拡散を、少人数ですることもできそうだ。 ―有権者側ができる自衛策はないのか。 井口 有権者側は、実績のあるオンライン報道メディアやテレビ、候補者の公式アカウントで確認して「さっき見たSNSの投稿は何か怪しいな」と思うこともできるだろう。だが普段から考えていたことに沿った情報であれば、確かめずに思わず拡散してしまう人もいるのではないか。選挙戦の最終盤に激戦州の、それも限られた地域を狙って偽情報がばらまかれた時やインフルエンサーが拡散の過程にかんだ時、公式情報による訂正や反論は間に合わないかもしれない。