米大統領選は高齢対決の再来か?体調不安のバイデン、刑事訴追のトランプ弱み抱える両氏 選挙まで1年、第3の候補やAIの脅威に注目【共同通信特派員座談会】
一方で、バイデン氏自身の人柄や政策は、歴代米大統領の中では非常に優れていると言えるのではないか。2022年7月に安倍晋三元首相が奈良市で銃撃を受け死亡した際、ワシントンの日本大使公邸を弔問に訪れたバイデン氏の姿が今でも忘れられない。部下が準備した言葉ではなく、ひと言ずつ時間をかけて、じっくり考えながら記帳していた。それほどの人物でも統治できないのがアメリカの現状だ。 ▽物価上昇が好調な経済の実感帳消し ―経済情勢は争点になりうるだろうか。 建部佑介(経済担当) 米国では新型コロナウイルス禍の後、記録的なインフレに見舞われた。共和党は、物価高はバイデン大統領による大規模な財政出動などが招いた失策だと批判している。一方、バイデン氏は足元で物価上昇率が縮小しつつ、雇用は堅調さを維持し続けていることを政権による成果として誇っている。 統計上、米国経済は先進国の中でひとり勝ちと言っていい状態だ。物価上昇率の縮小は通常、経済の減速を伴うが、米国では個人消費も雇用も一時ほどではないが底堅いまま。年初にはマイナス成長を予想する声があった2023年の国内総生産(GDP)成長率は、2%と見込まれている。
しかし、好調な経済は政権支持率につながっていない。多くの米国民は好況を実感できていない。賃金の伸びは物価上昇を下回り、家庭の購買力が実質的に下がっているためだ。家賃は高騰し、中低所得層が重い負担を感じていることも支持低迷の一因となっていそうだ。 高木 数字上は良くても、食料品店のものの値段は上がり、移動に欠かせないガソリン価格も高いままで国民の不満は強い。政権が経済政策の効果をアピールしているのに、実感が伴わないのは、オバマ政権末期の2016年の時の雰囲気と似ている気もする。当時のオバマ大統領や民主党候補者、クリントン元国務長官への国民の不満が強く、トランプ氏の劇的な勝利につながった。 ▽既存の二大政党にうんざりした有権者は第3の候補に ―再選を目指すバイデン氏にとって最も気がかりなのが、第3の候補の動きだ。 高木 故ケネディ元大統領のおいで無所属のケネディ氏や、小政党「緑の党」のスタイン氏が出馬した。民主党中道派のマンチン上院議員も名乗りを上げそうで、バイデン氏の票が割れる可能性がある。乱立すれば岩盤支持層を抱えるトランプ氏が有利になるとの見方がある。スタイン氏は2016年の選挙でクリントン氏の票を奪い、トランプ氏の劇的勝利につながった要因の一つとされている。